盲目の錬金術師(荒川弘)
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465 名前:自治スレでローカルルール他を議論中 :2010/10/26(火) 02:08:00
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鋼の錬金術師というアニメの外伝の「盲目の錬金術師」魔法を「錬金術」という言葉に置き換えたような世界が舞台。
錬金術では色々な事が出来るが、死んだ人を蘇生させる事だけは誰も出来た事がないとされている。
主人公兄弟は母親を生き返らせようとして失敗して、
弟の方は全身を失い、魂だけ取り留め、鎧に魂が宿っただけの存在になってしまう。
このように、人を生き返らせる、というか人を造り出す「人体錬成」を行おうとすると、術者は肉体を欠くことが多い。
兄弟は、弟の体を元に戻すための方法を探して研究の旅に出るようになり、その中で、
かつて人体練成を成功させたものの、術の反動で両目を失ったという人物の事を知る。両目をえぐりとられるようにして失い、顔に大きな傷を持つその人物の名前はジュドウ。
ジュドウこそがタイトルの「盲目の錬金術師」だが、作中では特にその名前で呼ばれる事はない。
ジュドウはお金持ちの屋敷に仕えるお抱え錬金術師で、
お金持ちの利益のために研究を行う人なため、人体錬成をいかにして成功させたかは、
外部の者に教えてはならないと、一家の当主に言われていた。
現在の一家の当主は、中年の女性。夫が亡くなっているので未亡人。
未亡人には幼くて元気な娘がいるのだが、その娘のロザリーこそが、
人体錬成によって生き返らされた者だという。しばらく屋敷に滞在することになった兄弟は、未亡人から、
「亡くなった夫の部屋には絶対に入らないでください」と怪しいまでに釘を刺された。
そう言われると逆に気になり、もしかしたら人体錬成の方法の手掛かりがその部屋に隠されているのではないかと思えた。
そうして兄が一人でこっそりと部屋への侵入を試みようとしている間、一方の弟は遊び盛りのロザリーの相手をしていた。
遊んでいるうちに、弟の鎧の中身が空洞である事がうっかりロザリーにばれてしまった。
だがロザリーは少し驚いただけで、けろっとしていた。
「もっとすごいものを見ているから」と言って彼女は、「ロザリーの秘密を教えてあげる」と、
弟の手を引き、例の入ってはいけない部屋へと弟を案内した。
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466 名前:自治スレでローカルルール他を議論中 :2010/10/26(火) 02:09:42
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その部屋には、ロザリーぐらいの年頃の女の子が好みそうなぬいぐるみが大量に置かれ、
毎日取り換えられているであろう色とりどりの花が飾られていた。
そして部屋の中央には豪奢な椅子、その上にはロザリーと同じ髪の色をした少女が座っていた。
その少女は、高そうなフリフリの服を着せられて長い髪をしているから少女だという事がわかるものの、
全身がミイラ状になっており、眼窩も落ちくぼんで、どう見ても死体のようだった。
しかし、ロザリーが語りかけながら少女の髪をといであげると、わずかに身震いした。
「これが人体錬成で帰ってきたロザリー 私は孤児院からもらわれてきた偽者のロザリーなの」
とロザリーは説明する。かつてジュドウは人体練成を行ったが、出来あがったのはミイラ状の物体だった。
目玉を失って激痛に苦しむジュドウの叫び声を聞いて、一家の夫妻が現場に駆け付けると、
ジュドウは自分の身を案じるよりも先に、ロザリーは無事に生還できたのかをたずねてきた。
血まみれの彼を前に、夫妻は真実を言えなかった。
「安心しなさい。娘は帰ってきた。もとの姿のままで」
そうして、ジュドウの怪我が治るまでの間に、ロザリーの代わりとして、孤児院から背格好の似た少女が引き取られた。
少女の名前はエミ。現在、ロザリーを名乗っている女の子だった。本物のロザリーとされるミイラは、一応生きてはいるようでたまに動くが、コミュニケーションは全く取れない。
髪色は生前の彼女と似ているが、本当にそのミイラがロザリーなのか、
それともジュドウは別の何かを造り出してしまったのかはわからない。
だが、一緒に暮らすうちにジュドウに愛着を持ったエミは、
ジュドウが両目を失ってまで造ったものが偽物だとは信じたくなかった。
それは昔からジュドウと共にいた未亡人や他の使用人たちも同じ事で、
みんながミイラは本物のロザリーだと信じようとしていた。
「だから、ここにいるのが本物のロザリーだから、私はこの家の本当の子供にはなれないの」
エミは弟にそう語り、でも孤児としての貧しい暮らしに比べたらここは天国だと言って笑って見せた。
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467 名前:自治スレでローカルルール他を議論中 :2010/10/26(火) 02:11:46
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部屋の前までたどりついた兄は、その一部始終を影から目撃した。そんな兄の背後に未亡人が現れる。
彼女は、兄が部屋まで行く事を想定した上で、わざと煽るように部屋に立ち入らぬよう言ったのだという。
亡くなった夫に真実を言うなと言われており、その約束を守りたかった、
でも人体錬成が幸福をもたらすものでもないと知らせたくて、遠回しな方法で教えたのだった。ジュドウは、前の代から一家に仕える者で、一家との関係は金銭による主従関係でしかなかった。
しかし、共に暮らすうちにいつの頃からか、ジュドウと一家は一つの家族のような情を持ちあうようになっていた。
だからこそロザリーが亡くなった時の夫妻の悲しみようにジュドウは堪えられず、
ジュドウ自身のロザリーへの家族愛もあって、彼は誰にも言わずに一人で人体練成を実行した。
現在のロザリー=エミだという事は、屋敷の住人たちはジュドウ以外みな知っていた。
屋敷を去る事になった兄弟に対し、執事の老人は言う。
「我々使用人全員で彼を騙しているのですよ。そしてこれからも騙し続けるでしょう。
それでみんながいつも通りなら、それでいいのです」大きな門が閉められ、去り際の兄弟にエミは手をふる。彼女は口は笑っていたが悲しそうな顔をしていた。
扉が閉められた後に、弟は兄に対して言った。
「みんな優しい人たちだったね」
兄は弟に対して返す。
「ああ だけどみんな救われない」
おわり盲目になったら研究とかできないだろうし、ジュドウはほぼニートで、
「ロザリーを生き返らせたというでかい功績を最後に残している」という自負のもとでその生活に甘んじているだろうから、
尚更真実を教えられないだろうなとか、だからってまだ小さいエミに
家族外としての疎外感を与える環境ってどうなんだろうともやもやした。
でもエミは、衣食住的には孤児院暮らしよりもかなり満ち足りた日々を送っているし、
みんな完全に不幸なわけじゃなくて、本当に表面上は完璧な幸せなんだなと思うとよりもやもやした。
悪人がいないのに苦い終わり方って個人的に一番後味が悪いパターンだった
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470 名前:自治スレでローカルルール他を議論中 :2010/10/26(火) 09:06:27
- ミイラは飯食うのかな
点滴かな
中の人が本物だったらガチ生き地獄だなー
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482 名前:自治スレでローカルルール他を議論中 :2010/10/26(火) 18:14:08
- >>470
本物ではないってのが後に判明。てのも、この物語の主人公であるエドとアルも死んだ
母親を生き返らせようと人体練成するんだが、その時生まれたのは蠢く肉塊。で、結局
それを殺して埋めるんだが、後に人練成で死んだ人間は生き返らないってのが証明されてる。
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492 名前:自治スレでローカルルール他を議論中 :2010/10/27(水) 11:27:19
- >>470
中の人などいない
作品の本編で、死んだ人間は理屈の上で、どうあがいても生き返らせるのは不可能だという結論が出た。
ジュドウが両目と引き換えに得たのは人間っぽい形にしあがって、
内臓とかの器官もある程度造れたために生態活動のような物が行われているだけの、
心もなにもないただの生き人形みたいなもん本筋には関わらない外伝キャラだからジュドウたちがその真実を知らされる事はない