間引き(藤子・F・不二雄)

717 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/06/10(土) 22:17:34
後味の悪い漫画

舞台は近未来の日本。
主人公は駅のロッカーの監視員。
この世界では、人口が増えすぎて食料が不足し、配給制になってしまった。
一人当たりに割り当てられるカロリーが決まっている。だから、みんな腹をすかせている。
主人公は奥さんに送り出され、今日も出勤する。弁当はカップめん。
もはや愛情の欠片も感じられないが、怒ると余計に腹が減るし、我慢して食べる。

そこへ、新聞記者がやってくる。
最近、ロッカーに赤ん坊を捨てるカップルが増えている。その取材だという。
「そんなの毎日のことだし、別に珍しい事じゃないよ。記事にもならないでしょ」、
という主人公に対し、その現象はもっと重大な社会問題の氷山の一角にすぎないと
記者は言う。


718 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/06/10(土) 22:18:56
記者と一緒に見張っていると、さっそく高校生のカップルが赤ん坊を捨てに来る。
そこを、二人で取り押さえ、警察に通報。
しかし、カップルは反省の色など無く、
むしろ当然の行為を邪魔されたような物言いで反論する。
「自分で作ったものを捨てて何が悪い!?」

その様子を見た記者は力説する。
「いまの二人を見てどう思いますか?愛情というものを全く持ち合わせていないかのようでしょう?
 そもそも愛情とは、種を増やし存続させるための本能のようなものだ。
 しかし、人類は増えすぎてしまったために、もはや愛情というものが必要でなくなって
 しまったのではないでしょうか? もし、人類に愛情が戻ってくるとしたら、
 適当な人口に減ってしまった時でしょうね」
と、話しているうちに、今度は目の前で殺人事件が起こる。
しかし、記者も主人公も慣れた様子で、また警察に通報し、主人公は飛び散った血痕をモップで清める。
全て片付いて一人になった時、主人公はボンヤリとかんがえる。


719 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/06/10(土) 22:20:01
「もう慣れてしまったが、確かに最近、些細なことでの殺人が多すぎる。
 愛情が無くなってしまったからだと言われればそうかもしれない。
 そういえば、妻も最近やけに冷たいし。
 結婚したばかりの頃は情の深い女で、そこに惚れたのに…」

真っ暗な中でそんな事を考えていると、妻が迎えにやってくる。
「今日もお仕事ご苦労様。お弁当を作ってきたから、よかったら食べて」
もういつ以来かの、手作り弁当の味に主人公は涙を流す。
「やはり、人類から愛情が無くなったなんてあの記者の妄想だ。
 だって、妻はこんなに優しいじゃないか。迎えに来てくれた上に、少ない食料で弁当まで」
おにぎりを食べている途中で、美味しいかと聞かれるが、美味しいと最後まで答えられない。
なぜなら、青酸カリが入っていたからだった。
何が起こったか分からないまま、死んでしまう主人公。
「あなたには保険がかけてあるの。だってお腹がすいてしょうがなかったんだもの。」
奥さんに引きずられ、コインロッカーに押し込まれる主人公…


722 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/06/10(土) 22:31:33
藤子Fの「間引き」ですね。

 

ミノタウロスの皿 (小学館文庫―藤子・F・不二雄〈異色短編集〉)
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藤子・F・不二雄大全集 SF・異色短編 1 (藤子・F・不二雄大全集 第3期)
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