ミスライムのカタコンベ(ミヒャエル・エンデ)

672 名前:1/2 エンデ「ミスライムのカタコンベ」 投稿日:2008/03/01(土) 23:34:49
ミヒャエル・エンデ短編集、「自由の牢獄」(1992)から「ミスライムのカタコンベ」
ジャンルとしてはファンタジー

主人公は広大な洞窟の中にいて無意味な労働を繰り返す影(人間?)の一人
影たちは出口のない洞窟の中で目覚めては
頭の中に響く「声」にしたがって硬い洞窟の岩盤を掘り、配給される食糧で暮らす。
目覚めるたびに眠る以前の記憶は消えており、疑問を抱いたり考えたり
何かを新しく創造することは影たちにはできないとされている。
また洞窟に外が存在するなどと考えてはならない。

そんななか主人公は夢に出てきた洞窟の外の風景を描こうとして追放されてしまう。

夢の通り外に通じる出口を求めて洞窟の中をさまよううちに
主人公は影たちを支配する「声」に反対するグループを名乗る一派に会い
「声」は自らの権力欲を満たすために影たちをそうとは知らせず奴隷としていると聞く。
創造という特殊な能力を見込まれて「影たちを解放するために必要な」キノコの栽培・管理を任される。
仲間を奴隷から救おうと必死にキノコの世話をする主人公。

ところがある日、温室の片隅でぼろぼろになった老人の影を見つけ
反対派のグループも「声」とグルであり、影たちを解放する気はなく
影たちに考えることを止めさせるために支給される食料に仕込まれる麻薬の
原料であるキノコを主人公に栽培させていたのだと主人公の前任者を名乗る老人に教えられる。
主人公が他の影と違い、忘れなかったり考えたり、外を夢見るのは
キノコの麻薬の効果に耐性があるためであり声の一派はその影響を恐れているはずだと。

主人公はキノコの温室をすべて破壊し、他の影を扇動し「声」への反乱を促す。


673 名前:2/2 エンデ「ミスライムのカタコンベ」 投稿日:2008/03/01(土) 23:41:34
ところがキノコの麻薬が切れると耐性のない他の影たちは苦しみだす。
苦痛があっても主人公は何も知らずに奴隷でいるよりましだと考える。
他の影を率いて外への通路へ向うと、「声」の主と主人公にキノコの管理を任せた反対派のリーダーが現れる。

彼らは影たちに以前の通りやっていくほうがはるかに幸せであるという。
どうせ洞窟の外に出ようものなら影たちは生きてはいけない。
洞窟の中に衣食住は満ち足りており、自ら何も決定せずに済む安楽な秩序があったと。

何も知らず奴隷でいることは不幸だと主人公が反駁すると
忘れることができず、疑問を持ってしまった主人公のみが不幸であり
他の影たちは現状に満足していたことに気づく。
さらに主人公が奴隷であることの苦しみを和らげてくれていたはずの麻薬の製造を妨害し、
本来感じるはずのなかった苦痛をみんなに与えたと知ると、他の影たちは主人公を見捨てる。

「声」がいうには影たちはかつて外から逃げて、一切の決定を「声」にまかせ
自由を放棄することで安楽を手に入れることを望んだという。
主人公一人がたまたま他と違っているために、それにしたがって
安易な従来どおりの世界の秩序を手放すのかと「声」がきいた。

主人公にももはや、外の世界が本当に現状より素晴らしいものなのか確信できなくなった。

影たちはまぶしい光があふれる外へと主人公を無言で突き出した。
外へ突き出されたとき、主人公の絶叫が洞窟中に響き渡り、そして出口は閉じられた。
ただし、主人公のあげた叫びが歓喜によるのか絶望によるものか、だれも断言できなかった。


682 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2008/03/02(日) 02:00:06
エンデってちょい前にも出たけど欝系の作家なのか
読んでみたくなったよ

 

自由の牢獄 (岩波現代文庫)
自由の牢獄 (岩波現代文庫)