LOVELESS/ウラかちかち山癒しの果ての惨殺劇(新井理恵)

264 名前:ウラかちかち山-癒しの果ての惨殺劇- 1/3 投稿日:2008/06/27(金) 07:06:10
新井理恵「LOVELESS」から。
見つけたflashからテキスト抜き取って多少整形しただけで要約してない為、長くなった。スマソ。
(flashバージョンはttp://flash.yh.land.to/katikati.the.movie.swf)

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昔昔、あるところにお爺さんとお婆さんが住んでおりました。
お爺さんは毎日山の畑を耕しておりましたが、一向に作物が育つ気配はありません。
それと言うのも、お爺さんが畑を耕し種をまくその側からその山に住むいたずら狸が
畑を踏み荒らし、片っ端から拾っては食べてしまうからでした。
しかし、その狸の行動には理由がありました。
お爺さんの畑は、土の痩せきった死の土地。長い年月を費やせば作物も実ったことでしょうけども、
年老いたお爺さんが生きてる間にはとうてい叶いそうになかったのです。
だったら初めからそう説明すれば良かったんでしょうけど、
この狸というのが、村でも有名な所謂「札付きの不良」だったのです。
ただ、彼の悪行は、実際は正当防衛だったり、何かしら理由あっての事でしたが、
言い訳をしない彼は悪者のレッテルを貼られていく事になりました。
そんな自分が何か忠告した所で却ってお爺さんに不快な思いをさせるだけ。
そこで、悪さをし続ける事でお爺さんが諦めて何処か別の土地を探してくれるよう望んでいました。
そんな事とは露知らず、ある日お爺さんは遂に狸を捕まえてしまいました。
「こりゃあいい、今晩は狸汁をこさえよう」
相手は悪者の狸。お爺さんはお婆さんの提案に反論することはありませんでした。
狸は、運ばれた先の台所で、お婆さんの恐ろしい独白を聞いてしまいます。
「爺さまは、大好物のダンゴに毎日少しずつ毒を仕込んでるというのに気付かずよくたいらげる事じゃ」
聖人面したお婆さんはお爺さんに内緒で多額の保険金を掛け、亡き者にしようと企んでいました。
聞けばお婆さんはアルミ相場に手を出して耳を疑うような額の借金を抱えているらしい。
しかもお爺さんとの仲も本当は、村一番の色男から求婚されていたにも拘らず、
お爺さんがストーカー並みにしつこく求愛してきたため、仕方なく一緒になっただけだといいます。
だからといってこんな仕打ちが許される筈はない。そう思った狸は、お婆さんに声をかけました。


265 名前:ウラかちかち山-癒しの果ての惨殺劇- 2/3 投稿日:2008/06/27(金) 07:07:15
「そのような力仕事で奥様の白魚のような御手が汚されるのは見るに忍びない。
許されるものならば、この私めが奥様に代わり、その苦痛をこの身に受けてさしあげたい」
お婆さんもまだ「女」を廃業してないらしく縄は容易にほどかれました。
だけどお婆さんの目論みを阻止しようという狸の意図がバレてしまい、
揉み合った末、狸は誤ってお婆さんをその手にかけてしまいました。
お爺さんの身体は毎日少しずつ取り込まれ続けた毒によって確実に蝕まれています。
お爺さんに怪しまれぬよう毎日解毒剤を服用し、一緒に食事をしていたお婆さんの
解毒作用の染み渡った肉を喰らいでもしない限りはお爺さんは助かりません。
そこで狸はやむを得ずお婆さんの皮を剥ぎ、肉を切り刻み、「婆汁」を作りました。
お婆さんが不在では、お爺さんは心配して食事どころではないだろうと思い
狸は先程剥いだ皮でお婆さんになりすましてお爺さんの帰りを待つことにしました。
「久しぶりに肉を喰ったせいかなんだか調子が良くなった気がするなぁ」
こうして狸は見事、お爺さんに「婆汁」を食べさせる事ができました。
ところがその時、お婆さんの皮が剥がれてしまい、狸の姿をお爺さんに見られてしまいました。
こうなっては、全てを語るしか術はありません。しかし、狸は思いました。
――お婆さんの邪な嘘で塗り固められていたとはいえ、お爺さんにとってはそれが現実。
お婆さんとの楽しい生活、安らかな思い出、幸せだった日々。
真実を語ることによってお爺さんのこれまでの人生全てが否定されることになってしまう。
そんなの…あまりにも悲しすぎる。
「やーいやーい! ジジイが婆汁食いやがったー!」
狸の取った行動は、いつも通り自分一人が悪者になる事。
―もしもこの先、お爺さんが憎しみから自分を殺そうとやってきても、
それで少しでもお爺さんの悲しみが癒えるのであれば、それもいい…
狸はそう思いながら、逃げるようにお爺さんの前から立ち去りました。
当然の事ながら、それからというもの、お爺さんは泣き濡れて暮らす日々。
あんなに精を出していた畑仕事も、実った作物を食べてくれる相手がいなくては意味のないこと。
「お爺さんどうしたのですか?」
そんなお爺さんの前に現れたのは見るからに可愛らしく性格の好さそうな兎。

266 名前:ウラかちかち山-癒しの果ての惨殺劇- 3/3 投稿日:2008/06/27(金) 07:09:35
「なんと惨い話なんでしょう私が仇を取ってさしあげます」
村でも評判の正義感の兎は、お爺さんの話を聞くや否や、早速行動に移し始めました。

それから先はご存じ「かちかち山」の話。
狸の背中に火を放ち、火傷に味噌を塗りたくり、あまつさえ泥舟に乗せて溺死させるという…。
だけどおかしくはないでしょうか?仇打ちならひと思いに殺してしまえば良いものを、
兎はどうしてここまで執拗に責めたてたのでしょう?
それは、この兎が並みならぬ加虐思考の持ち主だったからなのでした。
彼の家には彼の欲望の餌食となった亡骸が多数眠ってますが、その事実を知るものはいません。

自分を川に沈めようとする時の兎の愉しげな表情から、狸はそんな兎の性質をハッキリと悟ったのでした。
この兎は、正義の名の元に彼の淫猥な欲望を放出しているだけの事に過ぎなかったのです。
そして、兎の性質が白日の元に晒される日が永遠に来ないであろうこともわかっていました。
何故なら狸自身、この兎の上辺だけの印象から彼を良い性質の者だと思っていたのですから。
狸が死んだ処でお爺さんに再び幸せが訪れる訳でもない。
命を救うために摂らせた「婆汁」は、皮肉にもお爺さんから食欲というものを消失させてしまいました。
お爺さんが「婆汁」同様単なる肉の塊と化してしまう時もそう遠くはないであろう事でしょう。

「だけどそれもいいのかもしれないな」
薄れゆく意識の中、狸はぼんやりと思っていました。
――世の中幸せや平和なんていうものは結局上手く立ち回れる者達だけのもの。
お爺さんや自分のような、偽りに翻弄されるだけの不器用な者達が居るべき場所では初めから無かった。
だからお爺さんも、早くおいで…。
少し寂しいけれど、僕達が幸せになれる場所は……たぶん………。
(終)
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267 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2008/06/27(金) 07:19:21
狸タン…(´;ω;`)

268 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2008/06/27(金) 09:02:20
ラブレスは本編最終回もカオスだったなー
ストーキングの果てになんとか結婚までこぎつけたのに
「夫婦でも強姦罪は成立するのよ」と言われ一生童貞確定したり

 

LOVELESS (2)
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