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8 名前:本当にあった怖い名無し :2010/04/11(日) 16:31:37
井上ひさし『巷談辞典』pp.309-310「動物愛護」より
「動物を可愛がっておいでの皆さんからは叱られるかもしれないが、
 子どもの時分からずいぶん犬や猫を苛めてきた。
 (略)
 たとえば小学五年のとき、近所の猫を煮干し用雑魚(じゃこ)でおびきよせ、
 とっ捕えてやつの鼻の穴にわさびの塊を押し込んだことがある。
 例(くだん)の猫はぎゃっ!と名状すべからざる悲鳴をあげて三十糎もとびあがり、
 次の瞬間、時速百キロは優にあろうかと思われる速度で走り出し、そのまま行方不明になってしまった。
 
 また小学六年のとき、柔道を習い始めたが、あるとき、この柔道の教師が、
 「猫はどんな高いところから跳びおりても、ぴたりと四つ足をついて着地するが、
  姿三四郎はこの猫の着地法を見て独得の受身術を編み出した」
 と、話すのを聞き、友だちと猫の着地術を研究したことがある。
 やはり近所の猫を雑魚でおびきよせて捕え、火の見櫓の天辺から落したのだ。猫はにゃんともいわずに即死した。
 (略)

 火の見櫓の高さは三十米はたっぷりあった。
 妖怪変化と仙人と鳥類以外は、これはだれでも即死する高さである。
 高校時代、日向ぼっこをしていた猫にガソリンをかけ、マッチで火をつけたことがある。
 猫はあっという間に火の玉と燃えあがり、ひかり号なみの速度で西に向って走り出し、これまた行方不明となった。
 まだ達者ならとっくに地球を一周して戻ってきていいころであるが、
 それ以後、彼の姿にはとんとお目にかからぬ。おそらくどこかで野垂れ死にしたのであろう。
 それにしても、わたしはなぜこのように猫に辛く当ったのだろうか。
 (略)

 動物愛護家には人間を愛することのできない人が多いような気がする。
 あの人たちは自分と同じ種族である人間が飢えているのを見すごすことはできても、
 自分の傍にいる犬猫が飢えているのは黙視できないのではないか。
 (略)
 わたしたちの動物虐待は、屁理屈をつければ、
 そういう人たちの『動物愛護精神』にたいする無意識のからかいだったのだ。

(井上ひさし『巷談辞典』pp.309-310「動物愛護」より)


9 名前:本当にあった怖い名無し :2010/04/11(日) 17:37:50
ただの偏見で決め付けな上に自分の非道な行いの理由にするなんて最悪だな。

10 名前:本当にあった怖い名無し :2010/04/11(日) 17:44:10
なんで今井上ひさし?と思ったら亡くなったんだね。
ご冥福をお祈りします。

17 名前:本当にあった怖い名無し :2010/04/12(月) 04:05:44
>>8
>火の見櫓の高さは三十米はたっぷりあった。妖怪変化と仙人と鳥類以外は、これはだれでも即死する高さである。

猫って、30mくらいならそれなりに生存率あったような気がする。

 

巷談辞典 (文春文庫)
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