ボトルネック(米澤穂信)

251 名前:本当にあった怖い名無し :2010/07/03(土) 20:36:16
米澤穂信「ボトルネック」

 主人公はパラレルワールドに迷い込んだ。
 そこでは、自分が生まれる前に流産したはずの「姉」が存在し、自分は生まれていなかった。

 主人公の世界では、両親の中は冷え切ってお互いに外に愛人持ち。
 兄は受験に失敗して自棄になってバイクで事故って長く入院した後に死んだ。
 主人公が思いを寄せていた女性も崖から落ちて死んだ。

 「姉」がいる世界では、両親はラブラブで、兄は大学生になっていて、
 想い人の女も生きていてしかも明るい性格になっていた。

 他にも色々と元の世界と違いがあって、「姉」と一緒に探っていくと、
 いずれも「姉」の行動が(意識的にだったり偶然だったりで)キーになって
 何もかもが良い方向に転がっていたことがわかる。

 主人公は「俺がいることによって、みんな事態が悪くなるんじゃねーか! 
 姉がいた方がよかったんじゃねーか! 俺は邪魔な存在なのか!?」と嫌な気持ちになったところで、
 元の世界に戻ってきた。

おわり

読んでいて、何か救いめいた開き直りみたいなことぐらいはあるのかな…と思ったのに、
嫌な気分の終わり方でびっくりした。


252 名前:本当にあった怖い名無し :2010/07/03(土) 21:00:05
>>251
自分が最近読んだバージョンでは、主人公は元の世界に戻ってきて
現実に絶望した上に、母親から「もういいからあんた死んで」みたいなこと言われて
自殺しようと好きな人が殺された崖に向かうところで終わり

崖から落ちた女の人は「従妹」に殺されてるんだけど、
その従妹ってのが自己愛性のキチガイで
子供の頃から大人の前だけではにこにこした優しい子なんだけど
にっこり笑いながら陰険でえげつないいじめをするような奴
主人公はその従妹の悪巧みとか全然見破れなくて結果好きな人を崖から落とされて殺されてる
でもパラレル世界では「姉」がその従妹の邪悪さを見破って阻止してるわけ
いろんな意味で力のないどうしようもない男の話だったってのがつらい
一人称主人公だから思い入れしながら読んでたので最期愕然とした


255 名前:本当にあった怖い名無し :2010/07/03(土) 22:47:39
>>251-252
自分がこれを読んで、切なかった部分は、主人公の死んだ恋人の性格が
内向的な主人公と似通っていて、それゆえにお互いに通じあっていたと、主人公は思っていが

パラレルワールドのほうの恋人は、性格が明るくて
その理由は、主人公の姉の明るい性格を「コピー」していたからで
それで主人公は、自分の世界のほうの恋人のほうも
心が通じあっていたわけじゃなくて、自分に合わせていただけという事実に
気づいて絶望しちゃうところ。


256 名前:本当にあった怖い名無し :2010/07/03(土) 23:09:15
悲劇の主人公であると同時に紛れもない疫病神だな

278 名前:本当にあった怖い名無し :2010/07/06(火) 00:19:14
米澤穂信「ボトルネック」について補足。
粗筋は概ね>>251-252のとおりだが、>>252は恐らく最後の方を流し読みして
誤解、下手すると曲解に取られかねない解釈の仕方してる。

まず、主人公は自殺しようと崖に来てから母親のメールを受け取ったのであって、
>>252の書いてるのとは時系列が逆。
更に、その前にある、この世界では生まれなかった筈の姉から携帯に電話が掛かってきて、
その会話から家族が自分を拒絶した、のではなく、自分が家族を拒絶し続けてきたのでは、ということに
思い至るというシーンが丸々省略されている。
ついでに、母親からのメールの文面は「恥をかかせるだけなら
(※主人公は兄の葬式をサボって旅に出てる)、もう二度と帰ってこなくてかまいません」
という内容で、普通に解釈すれば、やや突き放した感じで
「責任はきっちり取らせるが、とりあえず帰って来い」という、叱責と心配の入り混じった
親としてはごく普通の感情からのメールだと思う。
「もういいから死んで」何て解釈はひねくれ過ぎ。

つまり、時系列的には
もう死のうと崖に来る→いない筈の姉からの電話で、自殺から一歩だけ踏み止まる→
母親からのメールで、人との繋がりを実感しちょっと救われるとなり、
エンディングの解釈としては、辛くともとりあえず生きて、
もう一度崩壊した家族と向き合ってみようという、幸せになれるかどうかはわからんが
割とポジティブな方向のエンディングって解釈した方が妥当だと思う。
もやもやした余韻は引くが、単純に「後味悪い」とも言えない。

まあ、人の小説の解釈を否定するのもどうかとは思ったが
>>252の解釈だと読んでない人に大いなる誤解を招くと思ったので
悪いが全面的に否定するようなカキコをさせてもらった。
気を悪くしたならスマン>>252


279 名前:本当にあった怖い名無し :2010/07/06(火) 00:22:08
>>252を読んでひどい誰得小説だと思ったが
>>278だといい話だと思った。全然違う話じゃないかw

283 名前:278 :2010/07/06(火) 01:08:10
まあ、この作者の作風で、単純にポジティブ/単純にネガティブ、
その両者ともに否定するようなところがあるから、確かにある意味
どっちとも取れる表現が作品中にも多いよ。
俺もポジティブだとは思ったが、決してハッピーエンドだとは思えない
という感想だったし。

 

ボトルネック (新潮文庫)
ボトルネック (新潮文庫)