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115 名前:本当にあった怖い名無し :2010/08/11(水) 12:10:30
テッド・チャンのSF『あなたの人生の物語』が少し後味悪かった。
主人公は言語研究家の女性。
彼女は政府からの依頼で、先日飛来した異星人の言語を理解する任に就く。
異星人は非常に協力的で、手探りながらも順調に進む研究。
だがそのうちに女性は、異星人の持つ特殊な力を、図らずも手に入れてしまう。
その力とは、未来を知る力だった。
(正確には、人類が視界に入った光景(=空間)をまとめて認識するのと同じように、
 時間をまとめて認識する力。本当はこの説明にかなりの紙幅を費やされていて、
 SF的にはそこが面白いんだけど、どうしても細かくなってしまうのでここでは割愛。
 ただ、未来を知ることが出来ても変えることは出来ない類のものだと思って下さい)

未来を知るようになってしまった女性。
彼女は夜のテラスで1人佇み、心の中で「あなた」に話しかける。
「あなた」とは、いまだ生まれぬ彼女自身の娘のこと。

父親(=女性の夫)との出会い。「あなた」を産んだ時の喜び。
やがて大きく成長する「あなた」。
時には喧嘩し、時には姉妹のように親しく会話する自分たち。
それらを女性は丁寧に、優しく、語り続ける。
そして、あの運命の日のことも。

25歳になった「あなた」は大好きなロッククライミングに出掛ける。
そこで「あなた」は崖から足を踏み外し、わたしはそんな「あなた」に、
遺体安置所で再会することになるでしょう。
「あなたの娘さんですか?」
そう介添えの医師に問われたわたしは、こう答えるの。
「はい、わたしの娘です」と。


116 名前:本当にあった怖い名無し :2010/08/11(水) 12:12:39
そして最後の場面。
女性は夜のテラスに佇んだまま。
彼女はこの後、未来の夫がパーティー会場からこのテラスに抜け出してきて、
自分にプロポーズをしてくれることを知っている。
そして勿論、自分がOKすることも知っている。
男性はそんな彼女を優しく抱きしめ、こう尋ねる。

「子供はほしいかい?」

彼女は独白する。
これは悲劇なのかしら、喜劇なのかしら。
それでも勿論、わたしはこう答えるでしょう。
「ええ、もちろんよ」と。

以上。
言ってしまえば、ひょんなことから未来予知能力を得てしまった女性が、
同時に自分の娘が事故死することまで知ってしまうという話なんだけど。
確かに女性は娘のことを愛していて、死を悲しんでいるにも関わらず、
異星人と接するうちに物事の捉え方まで彼らの影響を受けてしまった女性が、
そうした未来図をどこか超然と語っている姿がどうにももやもやしたのでした。

…本当は、「超然と」という感じとも違うんだけど、あらすじベースでは
この微妙な感じはとても表現できそうにありません。
なにしろ、こんなストーリーなのに、タイトルは「あなたの人生の物語」だし、
文体はずっと大事な娘へ優しく語りかける調子で進むし。なんか感動もしちゃうし。

作者はこの読み手のもどかしさを通じて、人類と異星人の距離感を描いてるのだろうけど、
その「理解出来そうで出来ないという後味の悪さ」に自分はばっちりはまり込んだようです。


118 名前:本当にあった怖い名無し :2010/08/11(水) 12:41:16
>>116
書いてくれたあらすじだけ読むと
人は生まれ、誰もが逃れられない死へと向かって生きて行く。
という連綿と繰り返されてきた摂理を
勇気を持って受け止める決意をした女性にしか見えない。

119 名前:本当にあった怖い名無し :2010/08/11(水) 12:49:54
未来予知能力を得てしまった女性は不幸な未来にネガらない。
夜空を見上げながらつぶやく。
「今を一生懸命生きていきたい」      終

ラストで洒落怖スレの八宝菜せんせいがリンクしてしまって
ラノベの駄作にしかみえなくなったw


123 名前:本当にあった怖い名無し :2010/08/11(水) 12:58:19
>>119
>ラノベの駄作にしかみえなくなったw
あながち間違ってないと思う。
テッド・チャンはイーガンと同じで物語りと言うよりアイデア先行なので
ストーリーそのものは「なんじゃそら」って感じだ。

124 名前:115 :2010/08/11(水) 13:09:05
>>123
たしかにチャンはストーリーよりプロットや肉付けが面白い作家かもしれません。
一風変わった構成の中にウィットや皮肉を忍ばせたりもしますし。
そういう意味では要約には向かない作風なのかな。
自分の文章力があればまた違ったのでしょうが。

「あなたの人生の物語」はネビュラ賞もとっており、高く評価されています。
私の要約が失敗だったことは事実ですし、上手く書き直す力量もないのが歯がゆいですが、
ラノベとは一線を画するものであることだけは知っておいて貰えると嬉しいです。


136 名前:本当にあった怖い名無し :2010/08/11(水) 18:13:31
最近はラノベのパターンも増えて、いろんなジャンルを内包するようになったから、
テッド・チャンのハードSFをラノベだと言う人の気持ちも分かる気がする。
まあ彼の作品は結構難解で、見下すわけじゃないがラノベと同列ではないだろうな。

 

あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)
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