ホーム » 小説 » 小説/か行 » 剣客商売/雨避け小兵衛(池波正太郎)

505 名前:自治スレでローカルルール他を議論中 :2010/10/28(木) 00:19:22
池波正太郎の『剣客商売』のある1話で、「雨避け小兵衛」。

郊外で隠居暮らしの老剣士・小兵衛は、外出の帰りに驟雨に見舞われ、道端の百姓小屋に入る。
そこでしばらく雨が上がるのを待っていると、外から騒々しい声が近づいて来た。かと思うや、
気絶した少女を抱えた浪人者が小屋に逃げ込み、外で十人ばかりの人々が子供を返してくれと叫んでいた。
小兵衛は入れ違いでとっさに押入れの中へ隠れ、様子を窺う。
浪人者は「ならば五十両よこせ」と外の人達に要求した。
浪人者は料亭に入ろうとして準備中だとあしらわれ、
後から来た裕福な商家の母子がすんなり通されるのを見て逆上し、
娘を拐かして暴れながら、店の者達に追われてここまで逃げて来たのだ。
小兵衛はその浪人者に見覚えがあった。すっかり老けて身なりも荒んでいるが、
30年ほど前当時30歳くらいだった小兵衛と立会いをしたことがある剣士だった。
その男は、小兵衛に勝ったら高給で良家への仕官が叶うことになっていた。
男は見事な腕前で、小兵衛も危うく太刀を幾度か受けそうになるが、苦戦の末とうとう小兵衛が勝利した。
男は仕官の道を逃し、面汚しとして道場からも破門されて、いずこへか去って行った。
今は世情にも通じて気の利いた立ち回りを心得ている小兵衛だが、若い頃は四角四面で融通が利かなかった。
「あれほどの腕を持つ男が…惜しいことよ。あと五年後の自分ならわざと負けてやっていたところなのに…。」
剣の道に生き、女房を貰い、息子も生まれて、それなりに自由に使える金もあって楽隠居をしている自分に比べ、
自分のせいで人生を狂わされた男が食い詰め浪人に落ちぶれている姿を見て、同情と自責の念に駆られた小兵衛は
もし五十両を受け取って素直に少女を返して立ち去るなら、このまま見逃してやろうと思った。


506 名前:自治スレでローカルルール他を議論中 :2010/10/28(木) 00:20:28
ところが、店の使いが五十両を届けるのを待っているうちに、女にも飢えていた浪人者は
気絶している年端のいかない少女の寝姿にムラムラときて裾を捲り上げ、下腹部をまさぐり始めた。
これを見た小兵衛はさすがにもう見過ごす訳にはいかず、飛び出して浪人者の片目と腕に斬りつけ
少女を助けて外にいる店の者や母親に返した。浪人者は、店の者達に袋叩きにされている。
「礼など要らぬ」と小兵衛は雨の中をその場から逃げるように立ち去り、少し行った途中
ちょうどタッチの差で金包みを抱えて小屋へと向かっていた店の使いとすれ違った。
小兵衛は舌打ちし、走り去った。

幼女に手を出すのはさすがにそりゃイカンが、その後びしょぬれで帰宅した小兵衛が
風呂に入りながら「今頃あやつはどうなっただろう…」と気に掛けたり
「今の世の中はもう剣術遣いなぞ、どうにもならぬ生き物じゃ…」と年寄りじみた気弱な事を言っている結びが
なんとも切ないというか遣る瀬無い感じだった。


507 名前:自治スレでローカルルール他を議論中 :2010/10/28(木) 01:18:38
後味悪いというか、本当にやるせないという言葉がピッタリだ

514 名前:自治スレでローカルルール他を議論中 :2010/10/28(木) 09:15:01
>>505
誘拐で身代金要求なんて、かなりの重罪だよね…
腕のいい剣士だったとか関係ないし。

もしこいつが農民だったら、
主人公はこの悪党めと、
たちどころに切り捨ててたんじゃないの?

自分たち剣士はある程度金もらって優遇されるべき、
なんていう優越意識が気持ち悪い。


517 名前:自治スレでローカルルール他を議論中 :2010/10/28(木) 09:27:24
>>506
そんな小兵衛ですが2度目の妻おはるはたしか30歳くらい年下のはずw

525 名前:自治スレでローカルルール他を議論中 :2010/10/29(金) 04:39:02
>>517
連載当初、たしか小兵衛が60歳(59歳?)でおはるが19歳だったから、40歳ほど離れてる。
「お孫さんみたいな若い嫁を連れてる」みたいに言われてなかったっけ?
それだけ離れてるのに、先に死ぬのはおはるの方で、小兵衛は93歳まで生きるが。

>>514
武士か町人・百姓かの“身分”じゃないよ。
小兵衛は、町人や百姓でも気骨があって筋の良い見所のある奴には目を掛けてるし、
武家でも剣術の鍛錬を放棄している弱腰や礼儀に適わない単なる傲慢な腕っぷし自慢はケチョンケチョンにけなす。

あと、池波正太郎の主人公は鬼平なんかでもそうだけど
金銭に関しては清濁併せ呑む感じで、決して清廉潔白ではないが遣うべきところでは惜しまず金離れも良く
作者の理想像が滲み出てる感じだから、いっぺん読んでみるとそういう誤解(既得権益うんぬん)は解けると思う。

てか、剣客「商売」ってタイトルからしても、
「戦国も遠く過ぎ去った今の太平の世の中、もはや剣で相手を倒すことそのもので食っていける時代ではない」
みたいな諦念観が底流にあって、ある程度人並みの生活を送るには剣を商売道具と妥協して世間に迎合するか、
さもなくば、純粋に剣の道だけを極めようとして生きればアウトサイダーで常に生死もおぼつかぬ身になってしまうか、
「天下泰平の世で剣士は生きにくい→さて、じゃあ、どうしたものか」という前提でのそれぞれの人間模様がある。
どちらかというと、「剣士だから優遇されて当然という既得権益を守株する」なんてのとは対極にあると思う。


526 名前:自治スレでローカルルール他を議論中 :2010/10/29(金) 04:58:23
昔と今じゃ物の考え方も社会の在りようも違うので
歴史物の本を読む時は、現代の価値観は一旦おいとけ

とか偉そうに言おうとしたが、そういや自分自身
剣客商売の主人公夫婦の年齢差で気持ち悪くなって
読み通せなかったんだったw


527 名前:自治スレでローカルルール他を議論中 :2010/10/29(金) 08:11:50
作者の願望とか?
おさな妻は幾つになっても男性の夢なのか

529 名前:自治スレでローカルルール他を議論中 :2010/10/29(金) 09:26:16
小説だとほほえましく描かれてて、息子はじめ周囲の人たちも好意的なんだけど、
リアルにいたら気持ち悪いよねそんな夫婦。
ただ、お春にしてみれば年の差に目をつむれば玉の輿なんで……
妾でなく妻にしてもらったという点で御の字なのかも。

535 名前:自治スレでローカルルール他を議論中 :2010/10/29(金) 20:29:02
>>529
何で読んだか忘れたけど、その年の差夫婦の設定は
作者の知人に実際ものすごく若い嫁さんもらって並んで散歩しているご隠居さんがいて
それをモデルにした、みたいな後書きかインタビューがあったような気がする。
もし記憶違いならスマソ。

537 名前:自治スレでローカルルール他を議論中 :2010/10/29(金) 20:57:40
>>535
モデルになった人はなんどかエッセイにも登場してますよ
歳の離れた嫁さんとか、芋酒の話とか
残念ながら空襲で行方不明になってそれっきり音信不通だそうですが・・・

538 名前:自治スレでローカルルール他を議論中 :2010/10/29(金) 21:26:53
>>537
なんかそのエピソードが一番後味悪い気も

 

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