ホーム » 小説 » 小説/か行 » 消えた上履きの問題(西澤保彦)

8031/2:2013/03/30(土) 00:30:35.61
西澤康彦の作品は、どれも大概後味が悪いんだが、
その中でもいやーな感じになる作品を一つ。
「消えた上履きの問題」という、短編。

女子高教師の佑輔は、二つの問題に頭を抱えていた。

一つは、クラス内で起こっているいじめ問題についてだ。
イジメというのは、当然、いじめるほうが悪いに決まっている。
とはいえ今回のケースは、いじめられる側にも大きな問題があった。

いじめられている少女・智佐は、一言で言えば「水を差すのが大好きな子」だった。
皆が学校行事などで盛り上がっているときに「下らない。馬鹿みたい」と吐き捨てたり、
推理小説を読んでいる相手に、オチの直前で「犯人は○○よ」と囁いたりする。
とにかく周りが楽しんでいる物をぶちこわすのが快感、というような性格だった。
自業自得とは言え、浜田はクラスメイト達から嫌われており、
特にA子・B子・C子の三人からは、かなり直接的ないじめを受けていた。

もう一つの問題は、今夜この学校の近くで、人気アイドルのライブが開催されることだった。
生徒たちは、ライブに行くのを楽しみにして随分と浮き足立っていたが、
一方で、生活指導担当の教師・新井が、それに対して苛々を募らせていたのだ。

新井は一年前にもライブに出かけた生徒を「学業に専念しろ」と補導したことがあり、
その際「休日の使い方まで規制するのはおかしい」「学生がライブに行って何が悪いのか」
「誰か死んだりでもしたのなら、咎められるのも分かるけど」と生徒から苦情が殺到していた。

新井としては、今回もライブに行く生徒を補導したいのだが、
まともにやれば、また生徒たちに文句を言われ、「行き過ぎた指導」と注意されるのは目に見えている。
そのため新井は、少しでも落ち度があればいちゃもんをつけてライブに行くのを禁止してやろうと、
いつも以上に厳しく、生徒たちの行動に目を光らせていた。

その日、いじめられっこの少女・智佐は学校を欠席していた。
そのせいで新井は「ライブに行くためにさぼったんだ!」と騒ぎ立てるが、
他の教師から「ライブは夜からなので、学校をさぼる必要はありませんし」と正論で返される。
結局、生徒に難癖をつけようとした新井の目論見は失敗したのだった。


8042/2:2013/03/30(土) 00:35:38.09
ライブの翌日、智佐の遺体が発見された。どうやら、どこかから運ばれて川に捨てられたらしい。
佑輔は、A子達の顔色が妙に悪いことや、前日の言動に怪しい点があったことなどから、
彼女たち三人がイジメの延長で智佐を殺害してしまったのではないかと考え、煩悶する。
(このあたりでタイトルの上履き盗難事件が関わってくるのだが、割愛)

しかし佑輔の想像は間違っており、真実は違っていた。
智佐の死は、殺人ではなく自殺だったのだ。

一年前、ライブに出かけて補導されたのはA子達だった。
智佐はその顛末を知っていたので、それを利用してA子達に最後の嫌がらせを仕掛けた。
「あんた達、ライブ楽しみにしてるんでしょ。でも行けないからwww」
「去年、新井先生に『誰か死んだりでもしたのなら、咎められるのも分かる』って言ったのよね」
「私、教室で自殺するわ。そうすれば、新井先生はそれを口実にして、
 生徒がライブに行くのを禁止するwww」

それを聞いた三人は、半信半疑ながら早朝に登校し、
そこで本当に首を吊って自殺している智佐を発見した。
このまま智佐の遺体が見つかれば、本当にライブに行けなくなると思ったA子達は、
三人がかりで智佐の死体を教室から運び出し、川に捨てたのだった。

人の楽しみを奪うことが好きだからといって、そんなバカげたことのために死ぬ智佐も、
クラスメイトの死体を遺棄してまでアイドルのライブに行くA子達も、
どっちの心理も理解できず、非常にいやーなもやもやが残る作品だった。


805 本当にあった怖い名無し:2013/03/30(土) 01:11:45.57
自殺してまで楽しみを邪魔しても、がっかりした顔を見られなければ
意味ないんじゃ…と思うけど…モヤモヤするなぁ

 

謎亭論処―匠千暁の事件簿 (祥伝社文庫)
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