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4351/2:2013/07/27(土) 12:02:30.34
サキ「クモの巣」

エマと夫は、夫が相続した農園に越してきた。
カビ臭い居間に比べて、台所は広く清潔で眺めもいい。
暖炉の横のちょっとしたスペースはガラクタ置き場になっているが、
片付けて更紗のカーテンでも吊るせばくつろぐのにちょうどいい場所になるだろう。
と思ったエマだが、障害が1つあった。

屋敷には老家政婦のマーサが居着いていた。
何かぶつぶつ言いながら一日中忙しく働いて、
エマが新式の便利なやり方を教えても歯牙にもかけない。
年寄りだから仕方がない、田舎の伝統なのだ、と思ってみても、
マーサが生きているうちはたとえ女主人でも台所を模様替えするのは無理だろう。
まるで窓際のガラクタに誰かがクモの巣をかけて守っているような気がして、
エマはマーサが早く死んでくれたらと思い、
気に入らない老婆とはいえ死を願う自分を恐ろしいと思うのだった。

ある日、マーサが仕事の手を止めて庭を見て震えていた。
「奥様、死神ですだ」
「いつか来るだろうと思っとりましただ、ゆんべはコノハズクが鳴いとりましたし犬が吠え通しでした」
「何か白いもんが庭を通りましただ、いんや猫でもイタチでもねえですだ、ハァおそろしや」


4362/2:2013/07/27(土) 12:05:04.66
夫は木こりを監督中で、離れた所にいる。
嫌な婆さんだが助けを呼んでやろうとそこら中を探したが、夫のイトコのうすのろジム、
農夫でもないのに家畜売買に口を出したり下女に手を出したりの役立たずしか見つからない。
諦めて戻ると、マーサがニワトリの群れに餌をやりながら、死神が来たとつぶやいている。
「奥様、旦那様が死にましただ。木が倒れたのをよけようとして鉄柱にぶつかりなすっただよ。
ハァおそろしや、今担ぎ込まれたところですだ」
主人の死体が担ぎ込まれたというのに、マーサはいつもの仕事に戻っている

農園は一族の財産なので、うすのろジムが相続した。
ある寒い朝、エマは荷車に作物を積み込むのを待っていた。
エマ1人のために馬車を出すわけにはいかないので、駅まで便乗させてもらうのだ。
農園では、出ていく女より市場に出すニワトリやタマゴの方が大事なのだ。
エマが台所の窓を覗きこむと、マーサが80年前と変わらぬやり方で
市場に出すニワトリを下拵えしていた。
エマは農園の歴史から押し出された。完。

 

ザ・ベスト・オブ・サキ〈1〉 (ちくま文庫)
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