真相(横山秀夫)

291横山秀夫真相(1/2):2013/10/24(木) 22:52:47.62
横山秀夫の短編集「真相」から…確かストーリーは微妙に違うけどドラマにもなってた話

主人公は小さな会計事務所を経営している男。
昔息子(以下A)を殺人事件で失い、その犯人はいまだ捕まっていない。
主人公にとって殺されたAは自慢の息子であり、会計事務所の跡継ぎとしてとても可愛がっていた。
何年たっても進まぬ捜査に半ば諦めかけていたが、遂に犯人逮捕の知らせが届く。
Aの無念を晴らせたと喜ぶ主人公。

しかし犯人の供述は
「Aが万引きをしていたのを目撃しそれをネタにゆすろうとしたがカッとなって殺した」というものだった。
しかもその供述が新聞に載ってしまい、自慢の息子だったAに泥を塗られたと怒る主人公。

更に犯人の供述で、事件時には他にもう一人Aの友達らしき人物がおり、
その人物は別方向に逃げていった為、どちらかというと足の遅かったAの方を狙ったのだという。
もちろんそんな情報は犯人の供述で初めて明らかになったことだった。

更にそのもう一人の人物が、主人公の娘(以下B)と結婚し、
Aの親友でもあった男(以下C)だったことが判明
自分も万引きに加担したことが明らかになるのを恐れ、
Cが申し出なかったことで犯人逮捕が遅れ、何年も遺族が苦しみ続けた、
更にBと結婚したのも事件の捜査状況をより近くで知るためで、
Bの気持ちを利用したのではないかと憤る主人公

しかしなんとBはCが現場にいたことを知っており、
申し出るべきか悩むCを引きとめてすらいたという。
娘に裏切られたと絶望する主人公にBは言う。
「私はお兄ちゃんが大嫌いだった」と。


292横山秀夫真相(2/2):2013/10/24(木) 22:53:24.83
主人公にとっては非の打ちどころのない息子のAだったが、実は猫かぶりで
裏ではBに意地悪をし、跡継ぎだと可愛がられるのをいいことに好き勝手をしていた。
また事件のきっかけとなった万引きも、AがCに強要していたのだった。
Aの裏の顔を知り愕然とする主人公。

更に犯人の供述のカッとなって殺した理由というのは、
Aの吐いた「俺の親父はヤクザだ」という捨て台詞だったと知る。
悔しさから出たでまかせだとはいえ、自分のことをヤクザだと言ったA・・・
主人公は自分の見ていたAは偽物だったのかと悲しむ。
ふとその気持ちを零すと、Aは良い子でしたよ…と答える妻。
その一言に慰められる主人公・・・でEND。

この短編集「真相」は他に収録されてる話も全部後味が悪いものばかりだけど、
どれも心理描写が見事。興味がある人はぜひ読んでみてほしい。

 

真相 (双葉文庫)
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