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3431/5:2014/03/08(土) 15:54:29.08
塚本邦雄「香汗」

夏井は趣味で食物の文化史を研究している。。
友人の軽野がくれた南国銘菓を随筆で褒めたせいで、
そこの大学の学園祭で講演するはめになった。
南の町は五月だというのに真夏の暑さだった。

講演の数日後、その町に住む翔子という女から手紙が届き、今では百通を越えた。
以前から憧れていた27歳というが30過ぎに見えて頼もしい眉目秀麗
貴方の出たラジオを聞いたある南蛮菓子の事で質問がある、と喧しい。
夏井は元々筆不精、用事は電話か直接会いに行けばいいと思っているが、
翔子はなぜ返事をくれないのか何か気に障ったかと喧しい。
無視すれば切手を添え、さらに無視すれば哀訴。


3442/5:2014/03/08(土) 15:56:44.96
そして強請をねばねばとまとわりつくような文面で寄越す。
我慢ならず無愛想な葉書を一枚出せば、間を措かずに恋文紛いの長文の返事が来る。
この繰返しに夏井は嫌気がさしてきた。
夏井は軽野の親戚の涼絵と婚約中、身辺を整理しておきたいのだ。
お嬢さん育ちの涼絵が恋文紛いの百通もの手紙を誤解するといけない。

軽野に打ち明けると、
その町に行く用事があるからついでに断りを入れてやる、と頼もしい返事。
あの銘菓はその町に住むおばの土産、自分は甘味が苦手で、
夏井なら随筆のネタになると踏んで押し付けたせいだと軽野は恐縮している。

軽野が旅立ち、夏井は式場の予約や新居探しで忙しくなった。


345 3/5:2014/03/08(土) 15:59:46.06
涼絵に電話を掛けてもなぜか不通。

旅装の軽野が浮かぬ顔で現れた。
おばの家にまず立ち寄ったら、涼絵も偶然来ていたそうだ。
軽野が翔子宅に行った翌日涼絵もそこに行ったそうで、おばの家で婚約解消を告げた。
夏井は潔白だと慌てる軽野に涼絵は、
あの人が潔白なのは先刻承知貴方は口を出さないで、ととりつく島もない。

軽野によると翔子は33歳の美女、
3歳でポリオに罹りずっと車椅子生活で母と二人暮らし、
夏井を著作とラジオで以前から知っていて学園祭の講演に無理して出掛けたそうだ。
母は手紙をやめさせようとしたが翔子は聞かず、
手紙を書くだけが慰めだと狂乱するので好きにさせておいたとか。


346 4/5:2014/03/08(土) 16:02:17.65
婚約していらっしゃるのならやめさせる、と母は言ったし本人も納得したとか。

涼絵から手紙が届いた。
…血も涙もないくせに汗はたっぷりとおかきになりますのね。
同封のハンカチは講演会場の廊下で貴方がお落としになったものです。
あの人が拾い、大切に保管してくださったのです。
無用のトラブルを避けるという貴方の主義はよく存じ上げております。
その処世術の何と冷たい事か、
私もいつあの人のように冷たいあしらいを受けるかと思うと、
貴方は人生を共に送るお方にはなり得ません。
百通の手紙に対して木で鼻を括ったような無愛想な葉書がほんの数枚、
あの人は言葉で労って欲しかっただけなのに。


347 5/5:2014/03/08(土) 16:04:44.25
私が嫉妬するとお思いになりましたか、
私を狭量な女と誤解なさる心の狭さに慄然といたします。
ではいつまでも無傷で安らかに、お一人だけでお暮らしください。…

同封の紙包みには夏井のハンカチが、純白に洗い晒されて入っていた。
夏井は額に吹き出した汗をそのハンカチで拭った。


348 本当にあった怖い名無し:2014/03/08(土) 16:09:20.27
意味わからん

349 本当にあった怖い名無し:2014/03/08(土) 16:28:23.83
ストーカーを無視したらなぜか婚約者がストーカーに同情して婚約解消してきた
こう要約すると変な婚約者と縁が切れてよかったような

 

塚本邦雄全集〈第6巻〉小説(2)
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琥珀貴公子 (1975年)
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