ホーム » 小説 » 小説/あ行 » お助け(筒井康隆)

317 名前:七瀬再び 投稿日:01/12/30 23:28
自分も一つ思い出した。
厨学の時読んだ筒井康隆の「お助け」ていう短編。
何ともいえない後味を感じたなあ。
ちょっと長くなるけどダイジェストを書いて見ます。
読みにくかったらスマソ

318 名前:七瀬再び 投稿日:01/12/30 23:28
ある男がいた。彼は宇宙飛行士になるべく、毎日過酷な訓練を重ねていた。
その訓練の激烈さは尋常ではなく、まさに生命の危機スレスレというレベルのものであった。
そうして死の淵から舞い戻り、また訓練で自身を鍛えるというのを繰り返してきた。
そんな中、男はある異変に気付いた。

周囲のあらゆる物の速度が遅くなったような気がする。
彼の妻や彼を取り巻く人々の行動はイライラするほどスローになり、時間の流れも緩やかになった。
事実食事をしてもすぐ腹が減り、時計を見ても食事をした時間から数刻も経ってはいない。
日頃から自己愛が強く他人を見下している男は、のろい動作の妻達を嘲った。
しかし、これは彼だけの感覚であった。
妻や周辺の人々はひどくセカセカした動きの彼に戸惑い、やがてついてゆけなくなった。

徐々に、彼自身の時間と周囲の時間の差は、広がっていった。
それとは相反するように、訓練もさらに熾烈を極めていった。


319 名前:七瀬再び 投稿日:01/12/30 23:29
やがて、彼以外の物は、ほとんど動きが感じられないようになってしまった。
時計の針は遅々として進まず、道行く人々はもはや通行人ではなく、歩いている
格好や買い物をしている動作をしているマネキンに等しかった。
その時点でようやく彼は気付いた。
あの訓練の副産物として、彼は常人の何倍もの早さで動けるようになったのである。

その事を自覚した彼は、狂喜した。
彼の行動は、現実世界の速度では文字通り目にも止まらぬ早業。
人々はただ突っ立っているのだ。買い物や食事のフリをする人形のように。
盗みや痴漢、器物破損も思いのままである。
髪や髭は伸び放題、ボロボロの衣服をまとい、
「俺は神だ!俺自身が神なのだ!」
とわめき散らし、手当たり次第に壊しまくった。
しかし現実世界において彼の暴虐は、ただの自然災害の如き扱いとなっていたのである。
誰も、彼の存在には気付かなかった。
余りにも彼の速度が速すぎ、誰の目にも止まらなかったから・・・。


320 名前:七瀬再び 投稿日:01/12/30 23:29
そうして乱暴の限りを尽くした男だが、しばらくして猛烈な孤独感と虚無感に苛まれた。
どうせ自分が暴れても、誰も気付かないのだ。
反応あってこその悪戯なのに。これでは一人相撲ではないか。
すっかりやる気のなくなった男は、やがて暴れ疲れて道路の真ん中で大の字になり、
しばらくして疲れも手伝って、いつしかぐっすりと眠り込んでしまった。

どのくらい経っただろうか。
男は自分の腹に強烈な痛みを感じて、目を覚ました。
すると、彼の胴体に巨大なトラックが前輪を乗り上げているではないか。
気付いた時には既に遅く、がっちりとタイヤに身体が挟まれてしまって身動きがとれない。
そうこうしている内にも、動いているのかどうか分からないくらいゆっくりした動きで、しかし確実に、
タイヤはジワジワと彼の身体を圧してくる。
彼は迫り来る死の恐怖に、今までただの一度も口にした事のない言葉を発した。

「神様、お助けを!」


321 名前:七瀬再び 投稿日:01/12/30 23:29
全然ダイジェストじゃなかった・・・長過ぎ。
逝って来ます。

 

くさり―ホラー短篇集 (角川文庫)
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秒読み―筒井康隆コレクション (ボクラノSF)
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