プリンのおじちゃん(平山夢明)

259 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/02/07(火) 19:14:48
東京伝説の「プリンのおじちゃん」というのが後味最悪だった。

主人公は家賃の滞納を回収する仕事をしていた。
あるワンルームマンションの家賃を一年近く滞納している女の回収をまかされ、
主人公はそこに何度も通うがその女に会うことすらできないでいた。
ある日、部屋に電気がついているのをみて、部屋のドアをしつこくノックしていると
ようやくドアが開いた。しかし、そこにいたのは女ではなく三つか四つの男の子だった。
「開けてはいけない」といわれていたのにドアを開けてしまったことに泣き出す男の子。
慰めながら入った部屋はゴミだらけ、おまけに部屋の真ん中に引かれたタオルケットには
小さな赤ん坊が猫とともにノミにたかられながら寝ていた。ともかく男の子から
母親のいそうな時間帯を聞き出すと、主人公はその部屋を後にする。
翌日、再び訪れるが母親はいなかった。食事すらまともに食べていないのか、お土産にと
買ってきたプリンを「おいしい、おいしい」とひどく喜んで食べる男の子。
主人公はそんな男の子に同情しながらも、「お母さんにここに電話してと言って」と
電話番号を書いたメモを渡し、さらにわかりやすいところに伝言を残して去っていく。
しかし翌日「住居侵入罪で告訴する」と母親から電話があり、主人公は会社から叱責され
その担当を外されてしまう。それでも気になった主人公は何度かその家を訪れたが、
もう二度と扉が開くことはなかった。
季節がかわったころ、偶然、その傍を通りかかった主人公は部屋に行ってみた。
ノックをしたがやはり応答はない。たまたま出てきた隣の部屋の人に会った主人公は
その部屋は空き部屋になったことを聞かされる。「引っ越したのか?」と聞くと隣の人は
「母親は捕まった。子供を死なせたから。上の子供がプリンのおじちゃんを待つんだって
ベランダによじ登って外を眺めているうちに落ちてしまった。それから母親は色々と調べられ
捕まってしまったからもういないんだ」と教えてくれる。

後味が悪いっていうか、切ないっていうか、読んだあと何とも言えない気分になった。

 

東京伝説―狂える街の怖い話 (竹書房文庫)
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