ホーム » スレ別 » 後味の悪い話 その44 » 客(高橋葉介)

748 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2006/04/04(火) 15:15:19
昨夜出てた高橋葉介の初期の短篇で、救いのなかったやつ。
タイトルは「客」。

舞台は、たぶん少し昔のヨーロッパのどこか。
見るからに貧乏学生の主人公が、親友の下宿を訪ねてくる。
少し金を貸してもらうつもり。
すると親友は外出する所だった。お前も一緒に来いという。
町では知らぬ者のない大富豪の老婦人が、病気で死にかけている。
うなずいて「可哀想だね」と主人公。
しかし婦人には身寄りがなく、看取ってくれる親族もいない。
顔くもらせ「気の毒に」と主人公。そこで今朝、老婦人は広告を出した。
誰でも良いから臨終を看取ってくれた者に、遺産の一部をくれるという。
突如、豹変する主人公。「金!」
「世の中、きれい事じゃやっていけないからな」と親友。
走って屋敷に着いてみると、町中の人間が押し掛けていた。
玄関はギュウづめ、ケンカも起き、庭には仮設病院まで出来ている。
人々を越えて、二階の寝室に向かう主人公たち。皆知り合いのはずなのに、
屋敷いっぱいの人間たちは、もう誰もヒトの顔はしていない。
「婦人はどこだ?」「ババアを出せ!」「くたばり損ないのババアを出せ!」
苦しい。痛い、足では転んだ人を踏んでしまう。親友ともはぐれた。
叫ぶうち、窓からあふれだした一群に巻き込まれ、
主人公は二階から落下。
からくも噴水の水に落ち、命は助かった。


749 名前:748つづき 投稿日:2006/04/04(火) 15:16:46
すっかり風邪をひいた主人公は、親友の下宿で待っていた。
間もなく帰ってきた親友も、ひどいありさま。
服はズタボロ、メガネは割れ、手足が折れて高い治療費をとられた。
主人公が落ちた直後、二階の床が抜けたらしい。
つぶれた死体がいくつかあったが、老婦人かどうか見分けもつかないという。
恐る恐る借金を申し込む主人公だが、親友は激怒。
主人公も察して諦めるものの、皮肉のひとつも言いたい心境。
「今度誰かくたばり損ないを見つけても、キミ一人で行ってくれよな」
「うるさい!帰れ!」
一日でいろいろなものを無くしてしまった。
だが、主人公も金に困っている。その事実は変わらない。
主人公は、手にしていた置き時計を二束三文で売り飛ばす。
それは、さっき親友の部屋からくすねてきたものだ。
いい細工の時計で、年代ものかも知れない。親友の大切なものかも知れない。
だがそんな事はどうでも良かった。
世の中、きれい事ではやっていけないのだ。

何というか、読んだ頃は自分も金がなくて、笑うに笑えないというか。
いわゆる良い人間がひとりもいなくて、かえってリアルというか。
貧すればDONするを地で行ってて、「あ~あ…」的に後味悪かった……。

 

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