ホーム » 小説 » 小説/は行 » 雛の宿(三島由紀夫)

183 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/03/03(土) 11:51:24
三島由紀夫の「雛の宿」と言う話

大学生の男が夜の銀座のパチンコ屋で死んだ妹と同い年くらいの女の子と出会う
変な感じの子だけどひかれてその子の家まで付いて行ってしまう
なんでもその子は北多摩郡というところに住んでいてわざわざどうして
銀座まで出てきたのかといえば、男雛を探すためだという。名前は神田キヨ子と言った
彼女は母親と二人暮らしでひな祭りをやろうにも男雛がいないとつまらないからだそうだ

武蔵小金井の駅を降りる。町外れの彼女の家に着くと母親はやけに仰々しく挨拶をした。
かなり古そうな立派な雛人形が飾ってある。母親が料理と酒を運んできたが
それを見て驚いた。人形が使うような豆粒のような食器にこれまた小さな料理が乗っていたからだ
杯も小さく、すぐなくなるので何度もついでもらった。
そのうち少女が「眠くなっちゃった」と言って寝室へ行ってしまう
自分もそろそろ帰ろうかと思うが母親にしつこくとめられ泊まることになった
もちろん彼女と別室だろうと思っていたが、母親に案内されて部屋へ行くとそこには
裸の少女がいて手招きをしていた。

その後は想像通りの展開である。翌朝彼女は駅まで彼を送っていったが別れ際
彼女は彼に「いってらっしゃいませ」といった。彼は不可解に思った。

彼は二度とその家を訪れなかった。初夏、彼に彼女ができた。
しかし秋の半ばにその女に捨てられた。彼は狂おしい衝動に駆られ
夜の中央線に乗ってしまった。武蔵小金井駅で降りる。
あの日と違って秋の月が明るく虫が鳴いている。どうも道に迷ったらしく
行けども行けども例の家にたどり着かない。


184 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/03/03(土) 11:53:02
雑貨屋のようなタバコ屋がまだ開いていたのでその主人に神田家の所在を聞いた
「ああ、あの母子きちがいの家かね」おやじは屈託のなさそうな声で言った
「きちがいですって?キヨ子というのが娘の名です」
「そうだよ。あの娘も大人しいきちがいだが色きちがいだ。離縁した亭主が
送ってよこす金でああして何もせず暮らしているんだよ。知らない人はきちがいと
思わないし何人男を引っ張り込んだかね。ひところはずいぶん評判だったが
最近は噂を聞かないね。どうしてるんだか。様子を見に行く奴もいないしね」

彼は衝動で真っ青になった。道を聞くとろくに礼も言わずに店から立ち去った
行こうか行くまいか迷っているうち見覚えのある家に辿り着いてしまう
そっと庭からのぞくと紅いものが見える。ガラス戸の中にはっきりと見えた
あの日のひな壇があの晩と同じように飾られていたのだ。秋のさなかである
そしてまるで木彫りの彫像のような母と少女が向かい合って座っていた。
あの日と同じように。母子は微動もしなかった。彼はやがてそこを立ち去り駅へ引き返した

母子は彼が彼女を捨てた日から、毎夜ああして彼を待っていたのではないだろうか
男雛が帰ってくるまで女雛は秋になってもひな祭りをやめることができなかったのではあるまいか

というお話


186 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/03/03(土) 15:01:00
>知らない人はきちがいと思わないし何人男を引っ張り込んだかね
って聞いてるのに
>母子は彼が彼女を捨てた日から、毎夜ああして彼を待っていたのではないだろうか
と思う男性心理を笑う話?

187 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/03/03(土) 15:14:42
>>186
男の夢を壊しちゃだめだよ。

189 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/03/03(土) 18:34:03
>>183
武蔵小金井に住んでいるが、ゴミ問題で大変な普通の町だ。
昔は、多摩の山奥への入り口の雰囲気で、
狐や狸に化かされそうな雰囲気だったから、
この話が成立するような気がする。

 

三島由紀夫集 雛の宿―文豪怪談傑作選 (ちくま文庫)
三島由紀夫集 雛の宿
文豪怪談傑作選 (ちくま文庫)


後味悪い
(後味悪ければクリック)
読み込み中 ... 読み込み中 ...