マリーン(萩尾望都)

693 名前:1/3 投稿日:2007/06/22(金) 19:14:42
萩尾望都「マリーン」(原作は今里孝子という人)

少年エイブは母とふたり暮らし。
母はお金持ちのペイトン家で働いていたが、体調を崩して以来
エイブが代わりにペイトン家の小間使いをして家計を支えていた。
学校にもあまり行けないエイブは、ある日悪童たちにからかわれ、
大事な母の薬が入ったビンを割られてしまう。
若くきれいな女性が止めに来てくれたので悪童たちは逃げていくが、
薬を買いなおしに行こうにもお金を落としてしまったため困惑するエイブ。
助けてくれた女性はお金を拾うのを手伝ってくれた上、自分の銀のイヤリングを差し出し「これを足しにして」と言う。
「知らない人だから」とエイブは断るが「私は知っているから」と彼女。

彼女に再会した折、イヤリングを返そうとするが
「それはもう片方しかないからいらない。もう片方は船に置いてきてしまった」と断られる。
彼女はマリーンと名乗る。

何年かが過ぎ、ずっと体調の悪かった母親がついに帰らぬ人となってしまう。
エイブは学校を休みがちではあったが成績がとてもよかったため、
教師がペイトン氏を説得し引き取ってもらえることになった。
ペイトン家のお嬢様と同じ学校へ通うこととなったエイブ。
マリーンはエイブの生活に変化が起こるたび、エイブの前に現れ、優しい雰囲気と言葉で彼を励ましてくれた。
エイブはそんなマリーンに特別な感情を抱くようになる。


694 名前:2/3 投稿日:2007/06/22(金) 19:17:26
数年後、ペイトン家令嬢にテニスを教えていたコーチが、
エイブの運動能力に気づき、テニスをはじめるよう勧める。
自分のことを投資として見ているペイトン氏のためにも勉強をさぼるわけにはいかないので、
最初は断るエイブだが、是非にと勧められ練習をすることになる。
めきめきと腕を上げるエイブ。
マリーンはそんな彼にはじめて「あなたが好き」と告げた。

ペイトン家令嬢は実はエイブに好意を寄せていて、マリーンのことでやきもちを焼いて嫌味を言う。
彼女の気持ちに気づかないエイブは令嬢と言い合いになる。
娘を泣かせたことに激高したペイトン氏はエイブを頭ごなしに怒鳴りつける。
居合わせたテニスコーチは渡りに船とエイブをペイトン家から連れ去った。

エイブはとにかく早くお金を稼げるようになればそれでかまわないという考えから、
プロテニスプレイヤーとして活躍するようになる。
乱暴なプレイは評判も悪かったが強いことは事実であるためどんどん試合に出ては勝ち、賞金を手に入れる。
マリーンはそのプレイが素敵だと言う。
初めて出会ってから10年ほどになるだろうか、少年だったエイブはマリーンよりも背が高くなっていた。
しかしマリーンは初めて会った日のまま、10代後半の若く美しい女性にしか見えない。
マリーンは言う「あなたがすき、私の生まれてはじめての恋」
エイブも「テニスのチャンピオンになったら、そのときは・・・」
マリーンはそれを聞いて泣きながら去ってしまうのだった。

そんなふたりをペイトン家の令嬢は見ていた。
そしてマリーンの正体は伯爵家のお姫様で
生まれたときからの婚約者もいる人、身分違いどころではないのだと暴露する。
何も知らずにいたエイブはマリーンを責め立てるが、
マリーンはひたすらエイブを好きな気持ちだけを訴え、姿を消してしまう。


696 名前:3/3 投稿日:2007/06/22(金) 19:21:21
それからはなにかにとりつかれたように試合に出続けるエイブ。ついにチャンピオンと呼ばれるようになる。
マリーンの婚約者である子爵はアマチュアテニスプレイヤーだったため、
話題のプロテニスプレイヤーであるエイブにも結婚披露宴の招待状を送ってきた。
複雑な気持ちながらも出席するエイブ。披露宴は船上で行われた。
初対面の子爵は「金のためのテニス」と揶揄する。
エイブは「もちろん金のためだから遊びの人間よりも真剣だ」と言い返す。
ムキになった子爵とエイブは試合をすることになった。
子爵をテニスで叩きのめしているところへマリーンがやってくる。
マリーンはエイブを見つめて、黙ったまま涙を流すだけだった。

友人たちに冷やかされながら子爵はマリーンとともに部屋へ向かう。
なんとも言えない感情を持て余すエイブの耳に「花嫁が海に飛び込んだ」という叫びが聞こえた。
甲板にはエイブがずっと大切に持っていた、
少年の日にマリーンから受け取ったイヤリングのもう片方が落ちていた。

マリーンはこの日はじめてエイブに出会ったのだ。
そしてひと目で彼に恋をし、絶望のあまり海に飛び込んだ。
彼女の想いは時を越えて少年の日のエイブのもとへ会いに行き、彼の成長を見守っていたのだった・・・


697 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/06/22(金) 19:25:55
>>696
最後の3行で電気が走った。
萩尾望都の絵で読むと、もっと凄いんだろうな。

後味悪いって言うより、切なすぎる・・・(´Д⊂


698 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/06/22(金) 19:27:02
>>693
悲恋っていうだけで後味が悪いとは
感じなかったけどなー

ベイトンさんとこ追い出された経緯は、
令嬢があたかもエイブに乱暴されたかの
ように装って父親に泣きついたんだよね。
「それは良くない愛し方だ。それでは君の気持は
エイブに伝わらないよ」とかコーチに言われるんだけど
令嬢は最後まで素直になれずじまい。


699 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/06/22(金) 19:49:15
>>696
オチに笑ってしまったw

 

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