狂った夏(西村寿行)

936 名前:狂った夏 1/3 投稿日:2007/12/13(木) 03:24:49
「狂った夏」ちょいエロなので、嫌いな人はスルーヨロ。

人口1万人程の町で、若い巡査が行方不明となった。

町は寂れていた。
過去には温泉町として栄えたが、現在は湯量が減りどうにもならなかった。
その町に近い山中に、戦場ヶ原と呼ばれる場所があった。
5年前の夏、戦場ヶ原にヒッピの集団がやって来た。
ヒッピー達は暗闇に紛れて、全裸で踊り狂った。乱交が行われている。
警察が注意に出た。しかしヒッピー達は戦場ヶ原の使用許可を取っていた。
町人達は黙るしか無かった。警察も困り果てたが、どうしようもない。
結局、全裸ではなく褌とビキニを身につけて貰う事で対処した。

誰かが、ヒッピーを利用出来ないかと言った。
町興しの為に「祭り」として売り出すのはどうか、と言う話になった。
ヒッピー達も快諾した。町は大々的な宣伝を売った。「若者の原点、裸祭り」だ。
大盛況となっていた。

祭りは毎年3日の間、行われる。町はわざわざ戦場ヶ原までの路線を敷いた。
屋台が出る、ロックバンドが演奏をする。大勢の人間がやって来る。
参加者は皆、褌とビキニで過ごす。至る所で乱交が起こる。
夫が居る女も、妻が居る男も、老いも若きも性交に溺れるのだった。

やがて祭りの中心であるヒッピーやアウトロー達が、20人委員会を作った。
毎年7月15日、彼らは戦場ヶ原に集まる。その間、町人は戦場ヶ原へ行く事を
禁じられている。彼らは自治権を持っているのだった。


937 名前:狂った夏 2/3 投稿日:2007/12/13(木) 03:25:33
行方不明になった巡査は、兄と2人暮らし。明るく人好きのする人間だった。
対照的に、兄は偏屈で暗い男だった。兄は弟の失踪を、20人委員会に結びつける。
まず、立ち入りが禁止されている戦場ヶ原へ行った。
彼らは麻薬を使っていると言う噂があった。弟はそれを確かめに行き、
殺されたのではないか。兄はそう考えていた。
そこで女達に暴行を受け、20人委員会の中心的存在、
「グループ・サタン」のリーダーに「無関係だ」と告げられる。

兄は警察へ駆け込んだ。弟の失踪に、彼らが絡んでいる。調査を頼んだ。
暴行を受けた事も伝えた。暴行を加えた女達を告訴するつもりだった。
警察は渋々調べたが、何も証拠は出なかった。
町長や町の重鎮が、兄を説得にかかった。告訴を取り下げろと言う。
祭りが消えれば再び貧しい町に戻る。そう言われて兄はそれに従う。

その年の祭りも大盛況だった。兄は初めて祭りに足を運んだ。
弟の捜査は既に打ち切られていた。
そこで昔恋仲だった女(既婚)が、若い男と森へ駆け込むところを見かけた。
性交、性交。熱気に煽られる兄の元へ「グループ・サタン」の女が近づいて来た。

女は「あなたも女が欲しいのね。当然よ」と言う。兄は当然「違う」と返す。
女はサタン様(グループ・サタンのリーダー)の女だと言う。他に3人の女がいるとも。
女はサタンの元へ、兄を連れて行く。サタンは町の人妻を抱いていた。女は言う。
「あの女はサタン様の奴隷。私も奴隷。それの何がいけないと言うの」


938 名前:狂った夏 3/3 投稿日:2007/12/13(木) 03:26:04
祭りが終わり、町に平穏が訪れた。兄は毎日の様に山に入った。
毎年マスコミが騒ぐ。恒例の事だから町の人間は気にしない。
今年も何の事故も無く終わった。来年もそうなる。
兄は復讐を心に決めていた。20人委員会にも、町の人間にも、だ。

6度目の祭りが始まるころには、復讐の舞台は整っていた。
皆が夏を待っている。兄もまた、狂乱の夏を待ちわびていた。

8月。祭り当日に、サタンと女がやって来た。兄が呼び出したのだ。
女は上半身裸だった。兄は2人に茶を勧め、話を切り出した。
「あんた達の仲間にしてくれ、相当の金を払う」サタンは驚き、嘲った。
「お前も俺の連れてる様な女が欲しいのか。だがお前にゃ無理だ…」
だが、その言葉は最後まで続かなかった。兄は茶の中に痺れ薬(作中で解説なし)
を混ぜていた。2人は頽れた。やめてくれ、助けてくれと懇願する2人を
去年のうちに改造した2階へ引き摺り上げた。まず男を部屋に蹴り込んだ。
黄色い土煙の様なものが上がった。小屋いっぱいの毒蛾が羽ばたいたのだった。
男が絶命した後、女を閉じ込めた。女は最後まで許しを請い続けた。

兄は去年の祭りの後、毒蛾を集めた。2階を改造し、飼育小屋を造った。
今や数十万匹に増えた毒蛾の中で、2人は死んだ。

ーー夏を、町を、若者を潰してやる。アウトローを潰してやる。
若者文化をありがたがり、おべっかを使う大人を潰してやる。

祭りが始まった。兄は小屋から毒蛾を戦場ヶ原へ向けて放つ。
毒蛾は祭りを襲い、明日には町を襲う。4、5日後、毒蛾は死に絶える。
だが毒蛾は卵を産む。来年、再来年、そのまた先も、毒蛾は発生し続ける。
もう二度と夏は来ない。兄の復讐は終わったのだった。

……救いはどこですか?


939 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/12/13(木) 03:32:23
補足。

・サタン様は人間の歯をネックレスにして首にかけている。
・弟失踪後、しばらくして歯が1本増える。弟のものっぽい。
・弟は戦場ヶ原に埋められた?歯の数=殺した人間の数?
・恋仲の女が、5度目の祭りの後で兄の元を訪れる。兄が女を責めると
 女は逆切れして「じゃああんたもやれば!ほれ、抱いてみ!」と啖呵を切る。
 兄は怒って女を追い返す。
・サタン様の女曰く、サタン様は新人類。1日に何人もの女を満足させられるし、
 女はサタン様の奴隷になりたがるから、らしい。
・毒蛾は呼吸器官に侵入して、呼吸困難を起こす。皮膚についたら炎症が起こる。
 大量の鱗粉を浴びると、人間は死んでしまう。
・兄は毒蛾が祭りに突っ込む様に、森の中に照明を仕掛けたりしてる。
・祭りの管理は20人委員会とアウトローが自主的にやってる。それを評価する人も多い。

他にも、サタン様の女が兄を誘惑したり、サタン様が兄を侮辱したりする。
町の人間は祭りが無くなると困るから、弟の失踪には非協力的。
兄を白眼視したりする。警察も最初は抗議してたけど、町の人間の99%が
祭りに賛成しているので、手が出せない状態。

夫婦者も乱交に及ぶので、最初のうちは家庭内がぎすぎすしたりしたが
その内、どっちも楽しめるんだから…と、なあなあになってる様だ。


940 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/12/13(木) 03:39:12
うーん…どうだろう
確かに救いはないんだけど、後味悪いって言うのともまた違うような気がした
兄が返り討ちに遭ったり、サタン様を殺した後に実は生きていた弟が現れたとかしていれば、
後味悪いと思ったと思うんだけど

941 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/12/13(木) 05:36:08
毒蛾ってのがちょっと陳腐かなー。
殺虫剤に乙、だし。

942 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/12/13(木) 06:47:41
サキュバスとかインキュバスとかと関係してんだろ

943 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/12/13(木) 07:23:08
悪党が犠牲者の肉親に復讐されただけの事だから、
兄者GJとしか思えんなぁ。

944 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/12/13(木) 07:44:17
>>941 
30年以上前の作品だと思えば少し見方が変わらないかな。
ただ「狂った夏」は西村寿行の筆力がモノを言うので
原作読まないと伝わらない感覚は多々。
寿行作品はストーリーだけ話せばハァ?ってなっちゃうの多いしね。

945 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/12/13(木) 09:51:06
まとめ乙
読みごたえがあって面白かったです
復讐が成功して良かったので、後味は悪く感じませんでしたが、原作を読むと救われなさや空しさがあるのかな
弟さんが生きててサタン様の下僕としてエロ三昧じゃなくてホッとしました
サタン様は

946 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/12/13(木) 10:31:02
サタン様は…なにー!?
どうしたの?

947 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/12/13(木) 11:36:53
>>945…
( ;ω;)

948 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/12/13(木) 11:37:36
>>945
成仏してくれ、な?

949 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/12/13(木) 13:01:40
乙!なかなかおもしろそう
蛾嫌いだから想像してgkbr

>>941
数十万匹の蛾を殺虫剤で全滅させるって難しくない?
大量に使うだろうから人に悪影響&山は禿げ山になるんじゃ?
しかも土壌汚染は簡単に浄化されないバス。

全滅させなきゃ次の年には生き残りが羽化するし
いつまた増えるか分からんし。
祭りは廃れるだろうね。もしかしたら町ごと・・・

報われんね。祭りに参加しなかった子供や
老人も巻き込む訳だし・・・(出来なかった、かな)


950 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/12/13(木) 13:30:20
食物連鎖の下位に位置する種が
森で大繁殖しただけなら、一時的に
鳥の類が増えるだけで、いずれ
平常時に戻るんじゃない?

小さな野原とかだと、占領されたり
するみたいだけど。


954 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2007/12/13(木) 16:17:47
基地外どもが死んだだけでしょ?スッキリじゃん。
サタンとか言ってるんだから殺されそうになっても堂々としてなきゃw

 

双頭の蛇 (徳間文庫)
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