おしまいの日(新井素子)

713 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2008/02/01(金) 16:40:22
新井素子「おしまいの日」

かなり前に読んだのでうろ覚えですが・・・

主婦「三津子」が主人公。
旦那「はるさん」のことが好きで好きで、とても大事に思ってる。
「はるさん」はとても仕事が忙しい。毎日毎日、土日も返上で深夜まで働いている。
「三津子」は「はるさん」の身体が心配。
健康を損ねないか心配で心配で、でもそれは旦那の会社の事情。
自分にはどうすることも出来ず、ただただ「はるさん」のために夕食を作り、
彼が帰宅するまで箸を付けず、日記を付けながら静かに待ち続ける日々。
そんな日々の中、「三津子」は心配のあまり静かに精神のバランスを崩してゆく。
その「徐々に狂ってゆく」過程が日記形式で綴られてゆく。

「UFOがばら撒いた白い小さな虫が身体に入り込んで人を操る」みたいな
不気味な妄想がエスカレートして行き、
正気に戻ったときの彼女が記述を消したり破ったりした形跡なんかもあったりして
一番最後に

「おしまいの日が、きた」

と云う一言を書き残して彼女は失踪する。

「はるさん」はしばらく彼女を探すが、やがて「狂って自殺したもの」として諦める。
そして新しい妻を迎える。
さらにしばらく経って、「はるさん」は過労死する。
かつて、「三津子」が心配していた通り。

さらに時が経過したある日、「三津子」の友人の元に、彼女からの手紙が届く。


715 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2008/02/01(金) 16:43:02
その手紙には
「はるさん」のことが本当に好きで好きで、大切で、だから心配でたまらなかったこと。
自分が狂ってゆくのも判っていながら、どうしようもなかったこと。
自分の体調もおかしくて、それが妄想に拍車を掛けていたこと。
そして「おしまいの日」のことが書かれていた。

体調の変調。それが、妊娠によるものだったこと。
「はるさん」1人だけなら、まだ何とかなったかもしれない。
狂ってゆきながらも、まだしばらくは生活を続けられたかもしれない。
でも、心配する対象がもう1人増えたら、このギリギリの状態はもう保てない。破綻する。

お腹の子供は、狂ってるときは私の中に居座った大きな白い虫にしか思えない。
でも、正常なときだったら、可愛い子供だと愛しむことができる。

だから姿を消した。
「はるさん」が大事だから、私の中にいる小さな「はるさん」も大事だから、
どちらも傷つけないためには、こうするしかなかった。
1人なら耐えられるから。

こっちの「はるさん」は、私が守ってゆく。
だから、「はるさん」。大好きな「はるさん」。どうか、いつまでも、元気でいてください。

と、手紙が結ばれて終わり。

「身体の不調」は明らかに妊娠を指し示しているのに、彼女にはそれが正しく認識できない。
それを認識する日=彼女の心が破綻する日=「おしまいの日」だから。
だから、妊娠から目をそらすために「白い虫」の妄想にすがり、エスカレートさせてゆく。
この過程が何とも言えなかったです。

そして、そんな彼女をよそに「はるさん」はさっさと新しい妻を迎え、
過労死へと鮮やかに突っ走ってったのがもう何とも後味悪い。


716 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2008/02/01(金) 16:44:47
できれば、風邪薬のエピソードあたりもいれてほしかったかも

717 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2008/02/01(金) 16:48:21
>>716
俺に言ってる?
読んだの昔だったから覚えてないんだよ
風邪薬・・・よければ補完してくれ

719 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2008/02/01(金) 17:00:16
>>717
最初の方の日記で「最近体調が悪い」と風邪薬を飲むエピソードがあった
そして、後々、自分が妊娠初期にかなりきつい風邪薬を飲んでいたことが判明する
このとき飲んだ薬が胎児にどんな影響を与えたのかもわからない
その責任は自分にある…と自分をさらに追い詰め精神崩壊の後押しをした

自分が女だからかもしれないけど、この何気ない「風邪薬を飲む」という普通の行動が
後々彼女の心に重くのしかかる材料になるというのがかなり怖かったんだよね
男性には判りにくいエピソードだし、自分自身勝手にサリドマイド児とかと脳内でリンクしたのもあるかも

横ヤリスマソでした


720 名前:本当にあった怖い名無し 投稿日:2008/02/01(金) 17:03:03
>>719
ありがとう
そう言えばあったね それ

 

おしまいの日 (中公文庫)
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