ホーム » 小説 » 小説/か行 » コドモノクニ/かぐやひめ(朱川湊人)

533 名前:本当にあった怖い名無し :2008/10/15(水) 18:01:59
朱川湊人の「かぐやひめ」。

少女は、胸元がじんじんと痛むことを気にしていたが、
人の目がある電車内でなでるわけにもいかないと我慢していた。
電車から降りた彼女が向かう先は、父と弟の暮らすアパート。
少女の両親は離婚している。母が男をつくって家を出たためだった。
残された少女は、しばらくの間は父と弟と暮らしていたのだが、
ある時に母が一緒に暮らさないかと声をかけてきた。
父は譲ろうとしなかったが、少女自身が母のもとへ行きたいと望んだため、
少女は母と男と暮らすようになった。

一時的にとはいえ、なにも告げずに去っていった母を憎む気持があったものの、
父はあまり稼ぎが良くなく、母が逃げるのも仕方ないようなボロアパートに住んでいた。
一方、男はお金持ちで、少女に一人部屋を与え、ねだればピアノをすぐさま買ってきてくれるほどであった。

今までとは全く違う裕福な日々を送るようになった少女だが、それでもよく父のことを思い出していた。
母のもとへ行くと言った時の父のさみしそうな顔や、離れたくないと泣いた弟の顔が忘れられない。
また、父に相談したいことがあった。男が夜な夜な少女の乳房をいじってくることを。
今までは狸寝入りして気付かないふりをしていたが、昨夜は我慢しきれずに抵抗してしまった。
男は母には言うなと恫喝した。もし言ったとしても母は自分を守ってくれないだろうと少女は思った。
父ならばきっと自分を慰めて、いつかのように頭をなでてくれるはず、少女はそう願いながら歩いた。
歩いて服が胸元にこすれるたび、激痛が走った。
昨夜、男の唾液が毒となって自分の肌にしみついたような気がして、
消毒をしようとベンジンを胸元に塗ったからだった。

アパートの鍵はかけられていた。父も弟も外出しているようだった。
離れたところで待っていると、三つの人影が近づいてきた。
父と弟と、見知らぬ女性の姿だった。
三人は仲睦ましく笑い合っており、弟は女性のことをおかあさんと呼んでいた。
もうそこに自分の居場所はないのだと少女は感じ、そっと場を離れた。
胸の痛みを感じてふらふら歩いていた少女に、車に乗った見知らぬ男が乗らないかと声をかけた。
少女はもう何も考えられず、言われるままに車に乗った。


534 名前:本当にあった怖い名無し :2008/10/15(水) 18:04:47
「かぐやひめ」は「コドモノクニ」という四つの短編からなる物語のうちの一つ。
他の三つは、雪女らしきものを追いかけて吹雪の世界に迷い込んでしまう話、
親に叱られるのを恐れて隠れようとしていたら体が縮んで小人になってしまう話、
くらげのような謎の物体に捕食されてしまう話とか、ファンタジックなものばかりなのに、
これだけそういう要素が全くなかった。

四つの話がすべて終わったあとの〆の一文は
「そして子供たちは戻ってきませんでした」

 

いっぺんさん (文春文庫)
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