安全な生活(星新一)

5181/3:2014/03/14(金) 23:25:48.70
星新一「安全な生活」

30代独男。もてないわけではないが、結婚願望はない。
なぜ結婚しないのかと訊けば、とめどなく喋り続ける。

「そりゃあ僕だって誰かを好きになった事はあるさ、でもそいつが猫を被っていたら?
 結婚してから本性をあらわしたら?よくある話じゃないか云々」
「そいつが奇跡的に善良な女だったとしても、いずれ誰かが岡惚れするかもしれない、
 恋に狂ったストーカーに僕が刺されたりして云々」
「女なんか熱心に口説かれたら絶対心変わりするに決まってる、
 その場合は妻に殺されるんだ云々」

男は公務員で、左遷を恐れて一応は人並み以上に仕事をした。


5192/3:2014/03/14(金) 23:27:13.09
心霊スポットでの肝試しに誘われても、
僕は君たちと違って感受性の強い人間だから祟られるに決まってると断る。
飲みに誘われても行き先が柄の悪い土地なら、危険だからと断る。
国民的人気バンドのライブに誘われても、
ファンの大半を占める若者がエキサイトしたら何が起こるかわからないと断る。
男は安全第一をモットーに生きているつもりでいる。

男はあるイベントに珍しく興味を持った。
休日に出向く事にしたが、財布を忘れた事に地下鉄駅で気づいた。
財布を持って出直したが、乗り換えを間違えて逆方向に行ってしまった。
間違いに気づいたのは地上に出てから。
戻ろうとすると目の前で自転車事故。


520 3/3:2014/03/14(金) 23:29:19.30
ブレーキが故障した自転車が、人をよけようとして商店に突っ込んだのだ。
店主に証人を頼まれ、賠償金の持ち合わせがない自転車の男が
念書を書くので立会人として署名をし、時間切れ。

次の休日は親戚の相手で一日つぶれた。
その次の休日は上司の引っ越しの手伝い。
その次も、またその次も。

男は変化を忌み嫌い避けてきた。
変化の方も男を嫌うようになったのだろう。
何か楽しい事がありそうだからって今さら近づいたって知るもんか、というわけ。

心の中に、どこまでも続く何の変化もない一本道のイメージが
すべて灰色で浮かんできた。


546 本当にあった怖い名無し:2014/03/15(土) 17:56:15.67
>>520
でもこういう人間って実際居る
楽しそうな事に近寄ろうとすると絶対に邪魔が入る
しかもその人と違って回避が出来ない様な外的要因の不幸

 

これからの出来事 (新潮文庫)
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