高熱隧道(吉村昭)

521高熱隧道(1/6):2014/03/15(土) 00:19:35.71
高熱隧道
吉村昭の『高熱隧道』の終わり方が後味悪かった。

この作品は、
日本電力黒部川第三発電所(現・仙人谷ダム)での工事を題材にした作品。
登場人物こそ架空の人間であるものの、
技師やら人夫(作業員)の描写がかなり生々しい。

工事現場が山奥にある秘境であったため、
工事現場まで資材を運ぶ途中、転落で40人、落石で2人死んだ。


522高熱隧道(2/6):2014/03/15(土) 00:21:08.99
工事現場の地下には高熱の断層が通っているため、
岩盤を少し掘り進んだ程度で岩盤温度が摂氏70度を超える。
(『掘り進めれば高熱の層から抜けて、温度は低くなる』という地質学者の予想に反して、
 その後も岩盤温度はぐんぐん上がり、最終的に165度にまで達する)

掘り進めるうちに人夫や技師も熱に耐えられなくなるので、
解決策として、冷水を川から引いてきて、
ホースを使って人夫達に水を浴びせる『かけ屋』なる役職を作る
アホみたいだが、このくらいまでしなければまともに工事が出来ない。


523 高熱隧道(3/6):2014/03/15(土) 00:23:13.01
当時の火薬取締法でのダイナマイトの使用制限温度は40度までだが、工事を強行。
削岩機で岩盤に穴を開け、その中にダイナマイトを詰め込み、
発破の後でトロッコにより岩盤を運び出す……という作業なのだが、
当然の如くダイナマイトが自然発火・暴発する事故が起きる。。

4人のかけ屋と4人の火薬係が死に、
県警が乗り込んできて工事は一時中断されるも、結局は再開。

ダイナマイトの自然発火への対策も、
『ダイナマイトをエボナイト製の管の中に詰め込む』という至極簡単なもの。
それは後に『ダイナマイトが挿入しにくい』という理由から、
エボキシ管から竹の管に代わった。


524 高熱隧道(4/6):2014/03/15(土) 00:24:23.55
今度は『泡雪崩』が発生し、
宿舎が泡の爆発によってに消し飛ばされ、75人が死亡。

奇跡的に遺体は一人残らず回収出来たものの、
4組の遺族は『本人の確認が出来ない』と遺骨の受け取りを拒否。
それが仇となり、4人は行方不明扱いとなり、
遺族の元に保険金が下りるまで3年の猶予が出来てしまう。
(人夫達は皆貧乏。高給に釣られてこの過酷な工事を行っているようなもの)
4組の遺族は少量の弔慰金だけを受け取り、どこかへと去って行った……


525 高熱隧道(5/6):2014/03/15(土) 00:26:07.93
泡雪崩の後、技師の一人が精神を病み、雪山へと消えた。
彼は二度と戻らなかった。

宿舎で火事が起きた。
28人が死んだ。

事務手続きを全て済ませた後、新たな遺体が見つかった。
面倒事を避ける為に、技師たちは恨むような目で見つめる人夫達の前で、
遺体を内密に処理した。

etc・・・・・・


526 高熱隧道(6/6):2014/03/15(土) 00:30:05.05
6月14日、午前6時10分。
1年3か月に渡る工事と233人の犠牲者の末、トンネルは貫通した。

が、直後にダイナマイト紛失事件が勃発。
技師と人夫達には、すでに埋められない溝が出来ていたのだ。

技師たちは人夫頭から、すぐに工事現場から去るように警告を受ける。
彼らは人夫達の亡霊に怯えながら、暗いトンネルの中を逃げるように歩き、
峡谷を去って行った。


528 高熱隧道(7/6):2014/03/15(土) 00:35:31.70
以上です。

全255ページもあるのに、トンネルが貫通したのは253ページ。
『警告を受けて現場から逃げ出した』云々の話は3ページでしか語られていません。
工事現場の過酷さに於いて語る部分があまりにも多すぎたため、
特別に辛い内容だけを選別抜粋しましたが、それだけの密度を誇る作品です。

是非とも一度、手に取って読まれてください。