英雄の書(宮部みゆき)

930 名前:英雄の書1/3 :2009/06/10(水) 00:35:04
優等生で人気者だったのに、学校で二人の生徒を殺傷して行方不明になった兄のひろきを捜すため
異世界に旅立ち、不思議な力を授けてもらって「ユーリ」として旅をする小学5年生のゆり子。

兄の部屋で見つけたしゃべる辞典の説明によると
兄はある本を通じて「英雄」に魅入られて、とりつかれてしまったらしい。
英雄とはゆり子の考えていたような正義一辺倒の存在ではない。
正義を貫くために戦って人を殺したりと、必ず光と闇の表裏一体となった存在なのだ。
長く封印されていたが、力を及ぼせる本を通じて自分に惹かれる人間を取り込んでいき力をつけてとうとう復活した。
その解放のためのさいごの一人は召還者と呼ばれ、それがゆり子の兄だったのだ。

一緒に旅をするのは、しゃべる辞典がハツカネズミの姿になったアジュと
無名僧のソラ、英雄の放つ怪物を退治する「狼」と呼ばれる戦士のアッシュ。
物語の初めの方から、みんな何か知っていてユーリに隠しているような描写があるが
ユーリは子供だし、兄のことで頭がいっぱいであまり気が回らない。
ただほかの無名僧たちやアッシュが妙にソラに邪険なのが気にかかる。

あと、無名僧というのは異世界にある僧院におびただしい人数で暮らしているのに
全員同じ顔で、全員でひとつで、個というものがない。
咎ある存在で、巨大な車みたいなものを回す苦行を行いつぐなっている。
ソラだけは少し変わっていて、ユーリの従者になれと言って体よく僧院を追い出されたかたちだ。


931 名前:英雄の書2/3 :2009/06/10(水) 00:37:23
途中で一度こちらの世界に戻ってきたときに、ユーリは手がかりを求めて兄の中学校へ行った。
そこで出会った顔に傷のある少女から、兄ひろきのことを聞く。
ひろきは傷のせいでいじめにあっていた少女をかばい、仲良くしていた。
しかし正義感の強いひろきが教師を批判したために、
おもしろくなく思ったある教師が生徒に教唆して、ひろきいじめを始めた。
誰からも好かれ人気者だったのに、一転して酷くいじめられるひろき。
そのために彼は英雄の力に魅せられてしまったのだ。

兄の手がかりを追ってたどり着いた町が英雄の襲撃を受ける。
おそろしい竜巻に巻き込まれめちゃくちゃになる町、犠牲になる人びと。
王城の地下深くには怪物の汚れを受けて怪物化し、恐ろしい姿になった人が閉じ込められていた。
ユーリは戦うが、英雄の力のすごさははんぱない。
しかも英雄は、そこにいたのかと言ってソラを呼ぶ。
じつはソラこそが探していた兄だった。
しかし兄はすでに英雄に魅入られた咎人として
個を失い無名僧となり、永遠に罪を償うだけの存在となりはてていた。
しかも、無名僧たちやアジュ、アッシュたちも、最初からソラの正体に気がついていた。
この旅の目的は、ユーリ以外のものたちにとっては最初から
ひろきを助けるためのものではなく、
召還者を浄化することによって、英雄の復活のために必要な力をそぎ、
英雄を再び封印することが目的だったのだ。


932 名前:英雄の書3/3 :2009/06/10(水) 00:39:05
寺院にいた無数の無名僧たちは、みんなひろきのような召還者たちだった。
つまり、英雄は封印しても封印しても、果てしなくよみがえってくるということなのだ。
結局ユーリは兄を救えずに自分の世界に戻る。
不思議な力も消えて、もとのふつうの少女に戻った。
ある日ゆり子のところに、異世界から元・狼という男が訪ねてきた。
自分の後をついで狼になって欲しいという話を、ゆり子は受け入れるのだった。

♯最後はまあ希望の光が射してるかもふうな終わり方だったけど、
ひろきは救われないし、いじめは報いを受けないし、
たくさんの人が怪物になったり死んだりするし、
英雄は無限に復活するし、みんなゆり子に本当のことを言わずに旅してるし、
ゆり子もリアル小5っぽくていらいらさせられるし、
英雄自体ひどい存在だし、すっきりするところがない。


933 名前:本当にあった怖い名無し :2009/06/10(水) 00:55:21
宮部みゆきのファンタジーものは大概後味悪い。

 

英雄の書(上) (新潮文庫)
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英雄の書(下) (新潮文庫)
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