ホーム » 小説 » 小説/か行 » 海村十一夜話/小景(尾崎士郎)

344 名前:本当にあった怖い名無し :2009/11/21(土) 18:37:04
尾崎士郎『海村十一夜話』より

ある宿屋に若い娘が一人で泊まりに来た。
三日ほど滞在してたが、その間観光名所も廻らず、買い物にも行かず、ずっと部屋に閉じ篭っていた。
(おいおい、まさか自殺でも考えてるのじゃねえよな)と宿屋の主人は訝しんだ。
が、それは杞憂に終わった。女は宿を発つときに
「もし、あとから私の名前をたずねて来た男がいましたら、警察に届けて下さい。その方がよろしくて」
と目を潤ませながら言った。女はお末という名前だった。

あくる日、鳥打帽を目深にかぶった請負師風の男が宿の前を行ったり来たりしていたが、
長いあいだためらった後で、意を決したように入ってきた。
男は一日ごろごろしていたが、次の日の朝になって、すっかり勘定を済ましたあとで、言いにくそうに
「もし、あとからお末という女がたずねてきましたら、この手紙を渡して下さい」と言った。
主人は一応、警察に電話し仔細を話した。男は駅で汽車を待っている時に捕まった。
その男は隣町の郵便局員で、横領した金をカバンに入れて持っていた。

数日後、宿屋の主人は隣町の町長の息子の結婚式に呼ばれて行った。そこで見た花嫁はお末だった。
(そうか、あの時の二人は横領した金を持って、どこかに駆け落ちするつもりだったのか)
あとになって分かったことだが、お末は郵便局長の娘だった。


345 名前:本当にあった怖い名無し :2009/11/21(土) 18:48:46
お末は男を愛していたが父のため諦めたの?
しかし警察に捕まらせなくても…男が不憫だ
それかはめられたのかな?同罪のお末がお咎めなく結婚してるのが後味悪いね…乙です

346 名前:本当にあった怖い名無し :2009/11/21(土) 18:49:32
あごめん男は横領はしたんだよね。じゃ捕まるのはしょうがないな

347 名前:本当にあった怖い名無し :2009/11/21(土) 19:12:51
横領は男の独断だったのかね
二人で打合せてたとかだったらもっと後味悪い

348 名前:本当にあった怖い名無し :2009/11/21(土) 20:13:47
手紙の内容が気になる・・・
それによって男の独断かお末の裏切りかわかりそうだが
後味悪いなぁ

349 名前:本当にあった怖い名無し :2009/11/21(土) 20:46:00
仮に共謀ではなかったとしても、「警察に報せた方がいい」と忠告してるってことは
少なくとも男が横領する計画なのを知ってはいて(うすうす感付いている程度だったとしても)、
それを止めずに黙認していた訳だよね。

明確な打合せがあったにせよ、
うすうす気付きながらもその男と駆落ちする約束を交わしたにせよ、
(潜在的な)共犯の立場にはあったと思う。


351 名前:本当にあった怖い名無し :2009/11/21(土) 22:31:18
でもって局長の娘なんだよな
お末が何考えてるのか解らんのが後味わるい

358 名前:本当にあった怖い名無し :2009/11/22(日) 13:48:33
>>351
お末に関して善意に解釈すれば、

 ・家のための縁談が持ち上がったが、自分には密かに恋人がいた
 ・苦悩しつつも、駆け落ちを選ぶ
 ・一人で待つ間、冷静さを取り戻し「感情優先で飛び出してきたけれど
   やはり親の立場を無下にはできない」と痛感
 ・横領して逃亡する男がどういう人生を辿るか末路は目に見えている、そうなる前に
   罪を重ねないうちに横領罪だけで捕まるよう手配するのがせめてもの情けだった

あたりかなぁ?

 

日本文学全集〈第45〉尾崎士郎集 (1963年)
日本文学全集〈第45〉
尾崎士郎集 (1963年)
尾崎士郎全集〈第3巻〉 (1966年)
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〈第3巻〉(1966年)


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