ホーム » スレ別 » 後味の悪い話 その114 » パタリロ!/第38話「FLY ME TO THE MOON」(魔夜峰央)

648 名前:1/2 :2010/07/23(金) 21:15:16
パタリロ!(10巻)より 「Fly me to the moon」

小国マリネラの航空宇宙局に勤めるロビーという少年は、
手をかざすだけで人の怪我や病気を治す不思議な能力を持っていた。
それに目をつけた少年国王パタリロは、次に飛ばす予定のロケットに国王権限で
彼を乗せるという約束で、その能力を自分の金儲けの為に使うことを持ちかける。
いつかアームストロング船長のように月へ行くことが夢だ、と目を輝かせて語る彼は、
パタリロの口約束にいとも容易く乗った。

どんな難病でも手をかざすだけで治す彼は、奇跡の少年として瞬く間に話題となった。
目論見どおりにお金が溜まり、守銭奴のパタリロは笑いが止まらない。
連日の仕事にロビーは次第に体調を悪くしていくが、月へ行けるという目標の為に、
無理をして人々を癒し続けた。

彼に会うため毎日長蛇の列ができ、ある日その列にパタリロとは旧知の仲である
MI6のバンコラン少佐が並んでいた。
彼の依頼とは、アントニウス枢機卿という世界的に有名な聖人の治療だった。
アジアで起きている戦争を止めさせるため、世界中を飛び回り精力的な活動をしている彼が、
脳溢血の為ロンドンで倒れたというのだ。
彼の尽力で時局は良い方向へと向かいつつあり、キーマンである彼が今倒れれば
再び戦火は激しくなってしまう。

ロビーは体力の限界で精密検査を受けていたが、バンコランの話を受けてパタリロは
ロビーをロンドンへ連れてゆく。世界平和の為と言うより、私欲の為だった。
パタリロと共にロンドンに着いたロビーだが、枢機卿に会う前に倒れてしまう。
どういう事だと戸惑うパタリロに、精密検査を行った医者から国際電話が入る。
ロビーの能力は、奇跡などではない。彼は自分の生命エネルギーを他人に
分け与えているだけなのだ、と切羽詰った声で医者は言った。
「もう血管も内臓もボロボロになってます。このままでは彼は死んでしまいます!」


649 名前:2/2 :2010/07/23(金) 21:18:43
ロビーの身を案じ、すぐにマリネラへ帰そうとするパタリロの元へ、
枢機卿が危篤との知らせが届いた。
「今すぐあの少年を!」
あと一度でも人の命を救えば、ロビーの生命力は枯渇する。
「駄目だ!ロビーの命が…」 躊躇するパタリロに、バンコランは言った。
「戦争が長引けば、何千何万の人命が失われるんだ!」
しばらくの後、苦渋の決断は下された。
「…よし」

未だ苦しそうなロビーにパタリロは、何気ない調子で枢機卿の元へ行くよう伝えた。
「危篤だそうだから、全精力を傾けて治療にあたってくれ。これが終わったらロケットに乗せてやる。
 ロケットにはお前の名前を付けてやるぞ、月行きロビー一世号だ」
大喜びし、枢機卿の元へ向かうロビーを見送るパタリロの顔はいつに無く深刻だった。

「全精力を…殿下のご命令…」
聖人の手を両手でしっかり握り締め、力尽きようとしながらも、ロビーは最後の生命力を振り絞った。
枢機卿がむくりと起き上がるのと同時に、ロビーはそのまま倒れ込み、ふっつりと事切れた。

自らの下らない欲で前途ある若者をみすみす死なせてしまった事で、
パタリロは生まれて初めて心の底から、涙を流した。心の中に、ロビーの言葉が去来していた。

「夢があるんです。宇宙飛行士になる勉強をして、いつか宇宙へ飛び出してみたいんです。
 アポロ11号のアームストロング船長みたいに、月へ…」


653 名前:本当にあった怖い名無し :2010/07/24(土) 00:09:59
直前に部長さえ治さなかったら…と思ってしまう

667 名前:本当にあった怖い名無し :2010/07/24(土) 13:41:25
>>649
ロビーが死んだ後、
バンゴランがパタリロに声をかけようとするが「触るな!」と一言で切り捨てるんだよな。

 

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