ホーム » 小説 » 小説/か行 » 代りに泣く夜(赤川次郎)

92 名前:本当にあった怖い名無し :2012/07/10(火) 11:46:36.79
大昔に読んだ、赤川次郎の短編。

主人公は多忙なリーマン。
帰宅しては自宅の留守電に吹き込まれた仕事の留守録を聞き
寝て起きて出社、という毎日を繰り返している。
その日もいつもどおり、帰宅と同時に録音された留守録を回した。
主人公は留守電の案内を自分の声で録音しているのだが
自分の声に続き、仕事関係のメッセージが流れる。いつもと変わらない仕事尽くしの内容ばかりだ。
うんざりしながら聴いていると、仕事の留守録に混じって全く知らない女の全く知らない声が録音されていた。
内容からして、デートの待ち合わせのようだ。
待ち合わせ場所は近場のカフェだった。
きっと女は番号を間違えてメッセージを吹き込んでしまったのだろうが、
好奇心の勝った主人公は翌日は休日なのをいいことに
待ち合わせの時間通りにカフェへ出向くことにした。

主人公はカフェで寛ぐフリをしながら、周囲に注意深く目を向けていた。
しばらくすると、約束の時間前に1人の若い女が現れる。
主人公は女を観察した。待ち合わせと言っていた時間から1時間経っても、彼女は1人でいるままだった。
待ち合わせの相手は留守録を聴いていないのだから、来る訳がない。1人でいる客は主人公と彼女くらいだ。
彼女が間違い留守録を残した当人だと確信した主人公は
自分も待ちぼうけを食らっている、と嘘をついて彼女に接触(ナンパ)を試みた。思いのほか女は食いついてきた。
話を聞くうちに、彼女は1児の子を持つ人妻だということが分かる。つまり待ち合わせ相手は浮気相手だったのだ。
そのまま流れで主人公と女はベッドイン。
一夜限りの関係かと思われたが、帰宅した主人公の家電には、あの女からの留守録が寂しそうな声で残されていた。
「今日はどうして来てくれなかったの?ずっと待ってたのに、酷いわ。今度は○曜日に××で待ってるから…」
主人公は思った。
浮気相手はきっと女が鬱陶しくなって、適当に嘘の番号を教えたんだろう。
それがたまたま自分の番号だったんだろう。


93 名前:本当にあった怖い名無し :2012/07/10(火) 11:47:41.72
主人公は当日××へ行こうとも思ったが、仕事で都合がつかずに断念。
これであの女もきっと諦めるだろう…と主人公は少し複雑な気持ちを抱く。
主人公は女を好きになりかけていたのだった。
そんなある日、突然会社に女が訪ねてくる。
相変わらず浮気相手からは約束をすっぽかされる毎日で、寂しくてどうしても主人公に話を聞いてもらいたかった。
主人公の顔なじみであるカフェ店員から、主人公のことを聞きだして会いにきたという。
そりゃ来ないよ、だって俺の電話に留守録吹き込まれてんだもん、と思いながら
浮気相手は留守録を聞いてないかも、と女に言うと
女曰く「毎日聞いてると言ってる」らしい。
こりゃ完全に相手から避けられているな、と確信した主人公は、もう彼を諦めるように諭してやる。

94 名前:本当にあった怖い名無し :2012/07/10(火) 11:49:36.51
その日、主人公は例のカフェ店員(♀)に協力してもらい、電話に細工をした。
留守電のメッセージを自分の声から、
店員の喋る「ただいまお掛けになった電話番号は使われておりません」というメッセージに変えたのだ。
女の未練を断ち切り、家族と幸せに暮らして欲しいという思いからの行動だった。
少し寂しいが、これで一件落着だ…と安心する主人公。

数日後、いつものカフェに出向くと例の店員から
店に警察が来たと言う話しを聞く。
主人公の知り合いである、あの女が死んだと言う。
死んだ日にちは、主人公が留守電メッセージを変えた翌日であった。
警察の話から女は自殺したらしいが、遺された手帳にこのカフェが行き着けと書かれていたので
何か心当たりがないか、聞いてきたらしい。
主人公は平静を装いながら「家庭が大変だったのかなぁ」とぼやくが、店員は
「家庭って何ですか?あの人、結婚もしていないし一人暮らしですよ」
驚愕する主人公。

女は適当に電話を掛けまくり、間違いを装って誰か構ってくれる男を探していたのかもしれない。
そして主人公が現れ、そこそこ楽しく過ごすことが出来、関係を続けていけると思ったかもしれない。
お互いに何も言い出さないが、留守電の声で女は主人公を気付いていたのかもしれない…。
そしてわざわざ会いに来るくらい、主人公を好きになってしまった。
しかし連絡する術は、良かれと思った主人公の行動により絶たれてしまった―。
主人公は女を救えなかった不甲斐なさに、1人泣く。

 

幽霊屋敷の電話番 (新潮文庫)
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