ホーム » 小説 » 小説/あ行 » おふくろの味(シャーリィ・ジャクスン)

733 名前:1/2 投稿日:2007/06/23(土) 10:44:29
シャーリィ・ジャクスンの短編集「くじ」より『おふくろの味』

デーヴィッドはさえない独身男。
彼の楽しみは一人暮らしのアパートの自室を美しく整えることだ。
壁を塗り替え、お気に入りの家具にカーテン、絨毯。
植物を飾り、吟味した食器に美味しい食事を盛り付ける。
裕福ではなかったが、デーヴィッドはそんな自分の生活にまあまあ満足していた。
隣室に住む女性、マーシャとは親しくなり、時々夕食に招いたりする。
マーシャは自分の部屋には無頓着で、彼女の部屋は新聞が散らばり洗濯物が山となって雑然として汚い。
そこを除けば気取らないマーシャは良き隣人であり、良き友人だ。

その晩もデーヴィッドはマーシャを夕食に招いていた。
美しくテーブルセッティングし、手料理を振る舞い楽しい時間を過ごす二人。
デーヴィッドお手製のチェリーパイをデザートにコーヒーを楽しんでいると、
マーシャの部屋で呼び鈴が鳴っているのが聞こえてきた。


734 名前:2/2 投稿日:2007/06/23(土) 10:45:24
大家の集金だと思ったマーシャは、デーヴィッドの部屋からエントランスの鍵を解除した。
すると、現れたのはデーヴィッドの知らない男性。ハリスと名のる彼はマーシャの同僚のようだ。
マーシャは急に気取りだし、当然のようにデーヴィッドの部屋にハリスを招き入れた。
「ちょっと寄ってみただけ」というハリスに、「私が作ったの」と言ってパイを出すマーシャ。
『マーシャのパイ』を褒めるハリスにマーシャは得意顔。
すっかり腰を落ち着けたハリスと、豹変したマーシャに腹を立てたデーヴィッドは
あてつけるように洗い物を始めたりするが、マーシャとハリスはイチャイチャしだして知らん顔。
すっかり自分の部屋のように振舞うマーシャはデーヴィッドに
「でていったら?」という無言の圧力まで発しはじめた。
「ぼくはもうおいとましたほうがよさそうだ」といって自室を出るデーヴィッド。
引き止める訳でもなく、清々したような感じのハリスとマーシャ。
デーヴィッドが向かったのは薄暗く汚れたマーシャの部屋。
隣から聞こえる微かな笑い声を聞きながら、デーヴィッドは床に散らばった新聞を
ゆっくりと拾い集め始めるのだった。

これだけの話なんだけど、デーヴィッドが怒ってマーシャとハリスを追い出す訳でもなく、
マーシャが謝りに来る訳でもなく、読み終わったあとすごくもやもやした、嫌な気持ちになる話だった。

 

くじ (異色作家短篇集)
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