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19 名前:本当にあった怖い名無し :2009/01/15(木) 10:38:10
小林泰三「綺麗な子」

近未来のある夫婦が主人公。
妻が犬を飼いたいと言うので子犬を買ってやるが、こんなの欲しくないと言い出す妻。
子供の頃飼ってた犬はこんなに手間を掛けさせなかった。
吠えなかったし、スリッパに噛み付いたりしなかったし、ウンチもおしっこもしなかった。
散歩なんて連れてかない。何でそんなことしなきゃいけないの?
ペロちゃんはそんなことしなくてもいい犬だったし、かわいかったわ。
と妻は言う。
ああ・・・夫は納得する。
「それは、ロボットの玩具犬だろ?これは本物だよ。ちゃんと感情もある」
「あたしのペロちゃんだって感情はあったわ。あたしにとっても懐いてた」
「それは感情じゃないよ」
そうプログラミングされた動作で「人間にそう思わせてる」だけなんだ。
と何度説明しても理解せず
「ペロちゃんはちゃんと喜んだり悲しんだりしてたわ!そんなこと言うなんてひどい!」
と泣き出す妻。
夫はなすすべなく譲歩する(犬は返したんだったか。忘れた。すまん)。

しばらくたって今度は「子供が欲しい」と言い出す妻。
友だちが赤ちゃんを作った。羨ましい。
でも10ヶ月も行動を制約されたくない。
今は自由と権利を守るため、子供も豚の腹を使って作るのが普通だ。自分もそうしたい。
言いようのない違和感を覚えながら、言い争っても無駄なことを痛感してる夫は
「君のしたいようにすればいい。精子が必要なら提供するし、精子バンクで買ってもいい」
と無気力に答える。無邪気に喜ぶ妻。
(続きます)


20 名前:本当にあった怖い名無し :2009/01/15(木) 10:39:35
「綺麗な子」2
豚の腹の胎児は成長し、見守るうちに情が移る夫。
だが妻は「やっぱり子供はいらない。中絶する」と言い出す。
友だちのところに遊びに行ったの。彼女、やつれきってた。
赤ちゃんは自分では何にも出来ないの。何もかもやってあげなきゃいけない。
それにトイレにも行かないで排泄物を垂れ流す。それを親が手で処分する。
そんな生活耐えられない。そんなものに私の人生を犠牲にしたくない。

彼女も中絶すると言ってた。と妻。
耳を疑う夫。
法律が変わったの。子供を育てるかどうかなんて、10ヶ月で決められるわけがない。
だから7歳までは人間とみなさず、胎児と同じように中絶が出来るようになったのよ。
みんな、個人の権利と自由を守るためなのよ。
と妻。
結局、彼女の言うとおり、豚の胎内の子供は殺される。

ところが、またしばらくたって「やっぱり子供が欲しい」と言う妻。
「君の言うとおり処分したじゃないか」と言う夫に妻はカタログをつきつけて言う。
「これならだいじょうぶよ」
それは「ロボットの子供」のカタログ。
こんなの子供じゃない。ロボットだ。感情なんてない。愛情なんて・・・
と言う議論は犬のときと同じ結論になり、彼らの家には「女の子」がやってくる。
(続きます)


21 名前:本当にあった怖い名無し :2009/01/15(木) 10:40:55
「綺麗な子」3
そのロボットをどうしても愛せない夫。
だが「世話も要らず、楽にかわいがれる」ロボットのペットやロボットの子供を世界中が受け入れ、
それが当たり前になって行く中で夫の感覚も狂い始める。
ちゃんと問い掛けに答え、様々な表情を浮かべる「これ」に、感情がないなんて言い切っていいのか?
自分にまとわりつき、かわいい笑顔を浮かべ、邪険にするとボロボロ涙を流して泣く「彼女」。
彼はついにそれを我が子として受け入れ、愛情を抱くようになる。

そして月日が流れ、夫婦は年をとり、でも相変わらず小さくかわいらしい娘がいて。
ある朝、娘は両親に言う。「おはよう。パパ。ママ」
返事がない。
しばらく問い掛けていた「それ」は、返事がないのでスリープモードに入る。
時間がたってスリープモードはリセットされ、同じことを繰り返す「それ」。
やがて別のモードが起動し、ベッドに寝てる母親の横に潜り込み、「おやすみ。ママ」と言うと
いつものようにママの指をぎゅっと握り締める。
母親の腐敗した指が千切れるが、「それ」はまったく気づかず、眠りに入る。
プログラムされたままに。
誰も来ない。何も起こらない。世界中が、同じ状況だから。
「それ」は朝が来れば同じことを繰り返す。両親の死体が腐敗してチリに返るまで。


25 名前:本当にあった怖い名無し :2009/01/15(木) 11:44:17
>>21
いいな、それ。
後味悪いのは、ロボットの娘が両親が死んでも同じコトを繰り返すところじゃなくて
>誰も来ない。何も起こらない。世界中が、同じ状況だから。
ここだな。人類自体がこうやって消えていくと思ったらゾクリとした。

 

脳髄工場 (角川ホラー文庫)
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