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633 名前:本当にあった怖い名無し :2009/06/01(月) 12:13:40
海外短編小説。
タイトルも作者も忘れた。

***

男はまだ若かったが、人生になんの喜びも感じていなかった。
母親の過干渉と過保護のために、男は少年時代から自分だけの時間を持つことが出来なかった。
友達も恋人も趣味もなく、特別に好きなものもない、仕事場と家を往復するだけの味気ない生活。
母親がそうなってしまった理由をよく知っていたために、
反抗することもできず、男はひたすら母の不安を受けとめ続けてきた。

その理由は、「誘拐」。
男はまだほんの子供だったある日、見知らぬ車に乗った「おじさん」に
一日中連れ回され、行方がわからなかったことがあるのだ。
夜になって一人ふらふらと戻ってきた子供は、そのまま熱を出して寝込み、
起きられるようになった時には「あの日」の記憶は曖昧になっていた。
田舎町で起きた前代未聞の出来事に半狂乱になった母は、
どこへいったのか、どんなことをされたのかもわからない哀れな我が子に
「あの日」の「おじさん」について思い出させるような物事を子供自身にも周囲にも禁じたので、
家族はひたすら「何か恐ろしいこと」が二度と起きないよう
異常なまでに神経質になって生活してきたのだった。


634 名前:本当にあった怖い名無し :2009/06/01(月) 12:14:31
その母が病で死んだしばらくの後、男は車を購入した。理由は自分でもよく分からなかった。
休日、男はあてもないドライブに出かけ、見知らぬ町で車を止めて
ぼんやりしていると、一人の男の子が人なつこく話しかけてきた。
車好きらしい子供の質問に答えているうちに、男はふと「乗ってみるかい」と口に出してみる。
男の子は目を輝かせてうなずき、車に乗ってきた。
二人のドライブは思いがけず楽しいものになった。
他愛もないお喋り、リラックスした様子の子供の笑顔に、男の心は和んだ。
家を遠く離れてしまった子供が不安がると、男は言葉巧みに、時には菓子やジュースで釣って引き留めた。
やがて大きな公園に着いた二人は、子供の提案でかくれんぼをすることになる。
鬼になった男は、目を閉じて数を数えている間に、突然「あの日」の「おじさん」との記憶を取り戻す。
そうだ、あの日、おじさんと僕はふたりで楽しくドライブして、どこかの公園で一緒に遊んだんだ・・・
忌まわしいことなど何も起きなかった、ただ面白い時間を過ごしただけだったんだ・・・
喜びを噛みしめる男だったが、いくら周囲を探しても子供が見つからないことに気づくと、恐ろしい焦燥に駆られる。
あの子はどこへいったんだ、まさか誘拐されたのでは、
「知らない大人に連れ回されている」と誰かに訴えているのでは。
怒鳴るように名前を呼んで探しているところへ、茂みの中に隠れていた子供が現れ、
男は激情のあまりその細い首を折りそうになるが、かろうじて踏みとどまる。
顔を覆って泣き出した男に子供は謝り、親がするように男をハグして頭を撫で、たどたどしく慰める。

もう夜になっている。
男は子供を家に送り、自分は家人に見つからない距離から見送る。
無事に家に入ったのを見届けて、軽くなった心を抱いて家路についた。

***

という話。個人的には、中盤からの男の感情の揺れが激しくて読んでいて面白かった。
それはともかく、過去の記憶が戻って(母の)トラウマから解放された男はよしとして、
この子供は男と同じく束縛され監視される生活を送ることになってしまうのでは?と思うと後味が悪かった。


635 名前:本当にあった怖い名無し :2009/06/01(月) 12:18:22
実はSFもので、男が図らずも誘拐してしまったのは、幼き日の自分自身だった
という話なのかと思った。

636 名前:本当にあった怖い名無し :2009/06/01(月) 12:33:51
中年男が子供とかくれんぼしてる間も記憶があいまいな部分があって、
実は子供をレイプしてたって話だったら恐ろしい。

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