ホーム » 小説 » 小説/は行 » 人斬り以蔵(司馬遼太郎)

241 名前:人斬り以蔵 1/7 :2009/06/17(水) 14:47:24
今日会社お休みなので、司馬遙太郎がんばってみた。

まず前提。
江戸時代の土佐では身分制度が厳格で、武士は上士・郷士・足軽と区別された。
足軽は武士階級でありながら苗字を名乗らせてもらえず、裸足を常としていた。
また、戦が起きれば足軽は槍・弓・鉄砲を持たせるのだから剣術は不要とされていた。
武士として貰う俸禄はわずかで、土地を持つ農民ほどの潤いはなく、学問を身に付ける手立てもなかった。
大河ドラマ「功名が辻」でちょっと有名になった山内一豊が
土佐に移って来た時から幕末までずっとそうだったそうだ。


242 名前:人斬り以蔵 2/7 :2009/06/17(水) 14:50:28
で本題。
以蔵は土佐藩士足軽の子だった。
剣を志し、宮元武蔵が剣を自得したとの話を間に受け、自宅で練習に励んでいた。
体力に優れ、しかし教養のない彼が手に入れた自己流の剣は、破壊的で乱暴だった。
あるとき武市半平太という人物が身分を問わない剣道場を開いたと噂を聞く。
以蔵は勇んで出かけ、なんとか道場に入れてくれと頼み込んだ。
武市は最初から良い印象を持たなかったが、剣を見てから決めることとし、道場の者と立ち合わせる。
そしてその粗暴さに呆れるものの、入門させて癖を直すことと決める。
しばらくの修行ののち、以蔵の剣は悪い癖もかなり抜けた。
元々体力に優れるため、誰と立ち合っても勝てるほど強かった。
武市は彼を江戸へ修行に連れて行くことにする。
(司馬はこのときの以蔵を「犬のよう」と表現している。
 飼い主には忠実で敵と見なした者には激しく牙をむく「犬」、と)

243 名前:人斬り以蔵 3/7 :2009/06/17(水) 14:53:40
武市と以蔵が江戸に出て数年、武市は「土佐勤王党」を立ち上げ、活躍場所を京都へと移す。
時は幕末、世間は大騒ぎで京の街ではあちこちでテロ事件が起きている。
(このへんはお好きな方はお好きでしょうが、ごちゃごちゃしてるので省略)
武市も藩の主要人物であり思想の違う吉田東洋暗殺の首謀者となっていた。
下僕である以蔵は武市の近くに寄り添い、
倒幕やなんやらの論議を傍で聞いているものの学がないのでさっぱり理解できていない。
武市はそんな学のない以蔵を軽く見ていたためか、論議の折々に邪魔者と名指しされた人物を
いつの間にか斬り殺しに行っていたことに長く気づかなかった。
気づいてからは、以蔵を責めた。
彼が思想も持たず自分の正義もないままに人を殺していることを諌めようとしたのだが、それはうまく伝わらなかった。
犬である以蔵にしてみれば大切なご主人のために人殺しまでしているというのに、
なぜ叱られるのかわからない、というわけだ。

244 名前:人斬り以蔵 4/7 :2009/06/17(水) 14:59:19
そんなとき、武市がはっきりと指揮を執った暗殺事件が起こる。
武市自身が企て、刺客を選んだ。そこに以蔵は選ばれていなかった。
以蔵は自分も参加するため、決行当日に京から近江まで駆けに駆け、ようやく現場にたどり着く。
そして決定的なミスを犯してしまう。

暗殺の現場で、他の刺客向けられた剣を避けようと、名乗りをあげてしまうのである。

このことはもちろん武市にも伝わっていた。
武市は激しく叱責する。
暗殺の現場で藩名を明かしてしまうとはどういう料簡であるかと。まして参加しろとは言っていないと。
お前のようなものが天下国家を憂いているつもりでいるのかと。
生活態度についても叱責され、以蔵はついに武市の下僕であることを放棄してしまった。


245 名前:人斬り以蔵 5/6 :2009/06/17(水) 15:01:44
ごめん、5と6くっつけた。

ほぼ同時期に、土佐藩の内情が変わる。
武市は藩に連れ帰され、吉田東洋暗殺事件の首謀として投獄された。
藩では吉田暗殺事件やその他の暗殺事件について調べようとしているが、武市以下誰ひとり口を割ろうとしなかった。
日々過酷な取調べが続き、耐えかねたもののために仲間内で毒薬が用意されていたほどだった。

その頃、以蔵はすでに武市の傍にはいなかった。
荒み切った生活をしたあげく、道端で起こった諍いのため町の捕吏にあっさりと捕らえられた。
尋問で土佐藩士である、以蔵であると申し立てても、
騙りであろうと信じてもらえなかったが、念のためと土佐藩の人間に面通しされる。
土佐藩士は以蔵であると確認するが、何を思ってか以蔵ではないと証言する。
以蔵はただの無宿人「鉄蔵」と名づけられ、追放処分となった。
追放された以蔵が京の街を離れてしばらく行くと、今度は土佐藩士たちに捕らえられる。
そして藩に連れ戻され、過酷な取調べを受け始めた。
武市以下は皆「以蔵では取調べに耐えられずすぐに口を割ってしまうに違いない」と戦慄する。
しかし以蔵は拷問に対して情けない泣き声をあげるものの「自分は無宿鉄蔵」と答えるばかりで何も証言しようはしない。
武市は、以蔵を少しは見直したものの、彼が拷問に耐え続けるとは考えていなかったのか、手紙と毒薬を送った。


246 名前:人斬り以蔵 さいご :2009/06/17(水) 15:08:39
翌日、拷問にかけられようとしたそのとき、以蔵はすべてを自白した。

この自白により、全員が断罪され、武市は切腹となった。

武市が切腹している頃、以蔵は藩士ではない「無宿鉄蔵」として極刑の梟首になり、
首だけが獄門台の上で風に吹かれていた。


248 名前:本当にあった怖い名無し :2009/06/17(水) 15:23:32
>>247
最後になんで以蔵は自白しちゃったの?
毒薬送られて来た事を「信頼されてない」と解釈して
絶望しちゃったの?

249 名前:本当にあった怖い名無し :2009/06/17(水) 15:35:53
可愛さあまって憎さ100倍とみた
ここまで尽くして来たのにそりゃねーよwと

250 名前:本当にあった怖い名無し :2009/06/17(水) 15:44:07
尽くしたって言っても自分勝手な忠誠心だよな…
ストーカーの言う「あんなに彼女を愛してあげたのに」的な

254 名前:本当にあった怖い名無し :2009/06/17(水) 16:06:00
ついでに、自分が読んだ日本史のこぼれ話では、
以蔵は他人の痛みには鈍感で性格も捻じ曲がって悪く
他人を斬ったり拷問したりして相手が泣き叫んだり漏らしたりすると
大笑いして
「先生(武智のこと)、あいつあんなんでしたよ、弱虫で情けない、みっともない」
とおおいばりで告げたものだが、自身が少し傷を受けたときは
のたうちまわってわめいて、牢での拷問は一瞬も耐え切れず、なき喚いて垂れ流してすぐに白状した

とありました。司馬さんの話とは少し違いますが、
司馬さんの方が物語としては何千倍も深いですね


256 名前:本当にあった怖い名無し :2009/06/17(水) 16:13:52
最後まで一人前の人間、つーか、まともな武士として扱われていなかったから、
その怒りをぶつけたのではないかと思った。

以蔵は剣を身に付けた時点で武士と自認してたんだと思うんだ。
でも学がなくて粗暴だから武市には犬扱いされて、それが辛くなって側から離れた。

捕まったときも土佐藩士が身の証を立ててくれると思ったらそれが裏切られたから、
「土佐の役にたつもんか」と思って、拷問に耐えたんだと思う。
武市からの手紙はどれほど読めたのかわからないけど、
「お前なんか武士じゃないから拷問耐えられないだろ」ってニュアンスが伝わったんじゃないかな。

でもって、藩士・以蔵として証言したんだけど、最後は無宿人としてさらし首になってるんだよね…。


260 名前:本当にあった怖い名無し :2009/06/17(水) 17:03:45
本当の気持ちは以蔵にしかわからんと思うけど
「口を割らない」ってのが彼なりの武士としての最後の意地だったんだろうね
それすら、そのレベルですら武市に信用されてないと知って絶望したんだと思う

武市に意趣返し、とかじゃなかったんじゃないかな
単純に「心の柱」が折れちゃっただけだと思う
それ以上意地を張る気力がなくなっちゃったんだよ
多分

 

人斬り以蔵 (新潮文庫)
人斬り以蔵 (新潮文庫)
新装版 王城の護衛者 (講談社文庫)
新装版 王城の護衛者 (講談社文庫)


後味悪い
(後味悪ければクリック)
読み込み中 ... 読み込み中 ...