頚を切られた雌鳥(オラシオ・キローガ)
愛し合って結ばれた夫婦が男児を授かった。
天使のように愛らしい赤ん坊で、両親の愛情を一身に受けていたが、
一歳半になる頃に突然高熱を発し、一夜明けるとすっかり白痴状態になってしまっていた。
両親は落胆したが、まだ若いこ ...
海村十一夜話/小景(尾崎士郎)
ある宿屋に若い娘が一人で泊まりに来た。
三日ほど滞在してたが、その間観光名所も廻らず、買い物にも行かず、ずっと部屋に閉じ篭っていた。
(おいおい、まさか自殺でも考えてるのじゃねえよな)と宿屋の主人は訝しんだ。
が、それは杞憂に終わった。女は宿を発つと ...
ハインツのジレンマ(ローレンス・コールバーグ)
ハインツはガンで瀕死の妻を救うため、最近開発された特効薬を買おうと考えたが
方々から借金しても薬の半額分しか金を用意できなかった。
ハインツは特効薬の開発者である薬屋に、
代金を半額にするか、足りない分を後払いにしてもらうよう頼 ...
チャアリイは何処にいる(牧逸馬)
(長文、うろ覚えで不正確なのは御容赦下さい。)
大富豪ロス氏の、幼い次男のチャアリイが、二人組の男に誘拐された。
早々に警察が捜索をはじめたが、手がかりは無かった。
後に、男達からは身 ...
ゲーム(星新一)
ちょっと変化球の話。
友人が最近事業に成功し、コツを聞きに行く主人公。
友人いわく、「実は魂と引き換えに悪魔に成功させてもらった」との事。
そんな事をして大丈夫なのか心配する主人公だが、友人はニヤリと笑って言うには、
「実は上手いやり方があるの ...
猿の手(W・W・ジェイコブズ)
「猿の手」 ウィリアム・ジェイコブス
舞台はイギリス。
初老のホワイト氏を訪れた友人は、猿の手のミイラを持っていた。
友人は猿の手をインド人の行者からもらったという。猿の手は持ち主の願いを
3つかなえてくれるが、同時に災いが訪れるのだそうだ。 ...
熊ちゃん(今江祥智)
今江祥智の「熊ちゃん」。
主人公の女の子は幼稚園児で、学生の兄と、会社員の父と、教師の母がいる。
女の子は家族に愛されていないわけではないが、
幼稚園のおむかえも、食卓での自分の話も(今日あったことを話す)全部一番最 ...
さんだらぼっち(宇江佐真理)
この物語は下っぴきをしている髪結いの伊三次と
紆余曲折をえて所帯を持った売れっ子芸者のお文と
その周辺で起こる事件や人の哀歓を描いているのだけど
そのエピの一つの『さんだらぼっち』
「さんだらぼっち」というのは米俵の両端を塞ぐための藁 ...
虚像(阿刀田高)
定年後だか間近で病死した、リーマンの葬儀にて。
喪主である未亡人は、同僚との友情、部下からの信頼を得ている夫を誇っていた。
ところが、弔問にやってきた部下も同僚も、通りいっぺんのお悔やみを言うだけで
誰一人 ...
飛行具(レイ・ブラッドベリ)
大昔の中国。
凧職人が凧を作りそれに乗って空高く舞い、皇帝にご覧に入れた。
人間が初めて鳥のように自由に空を飛ぶことができた喜びや
空からのすばらしい眺めを職人は語った。
けれども皇帝は、すぐさま職人を死刑にした。悲しみにくれて。
人がこんな道具を手 ...