玩具修理者(小林泰三)
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301 名前:1/2 :2010/10/20(水) 20:03:18
- 小林泰三の「玩具修理者」
ある喫茶店で向かい合っていた男女。
男の方がふと気になった事を女に質問する。
「何で昼間の間はサングラスをかけているんだい?」
その質問に対して女は答える代わりに突然昔話を始めた。彼女が子供の頃、小学生だった彼女はすでに両親の愛情も小さな弟に取られており、
彼女はろくに遊ぶ間も無く弟の世話を任されたりしていた。
その日も彼女は弟の世話を任され、真夏の暑い日差しの中を弟を背負いお使いに行かされていた。
長い歩道橋を渡り終えようとした時に日差しで息も絶え絶えだった彼女は足を踏み外し階段を転がり落ちた。
自分は痛みはあるが何とか動けるがふとおんぶ紐に括られて背負っていた弟を見ると明らかに死んでいた。
最初は鬱陶しく思っていた弟の死に喜びこそしたが直ぐに両親にどのように攻め立てられるのかと彼女は青ざめた。
そこで彼女は自分の学校で噂になっていたある存在のことを思い出す。
『どんな壊れたおもちゃでも自分の希望通りに直してくれるおかしな人』。
逸れは壊れたおもちゃをただ直すのではなく、例えばリモコンで動くようにして欲しいだとか、
ファミコンに繋いだらゲームが出来る様にして欲しいといった無茶な願いでも叶えてしまうという。
彼女はそこで弟をおもちゃだと偽り、その謎の修理者に“直して”貰えばいいんだと思いつく。
近所のおばちゃんや死んだ猫を同じように直して貰いに行った同級生等、様々な障害を乗り越え、
彼女は無事に修理者のもとにたどり着く。
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302 名前:2/2 :2010/10/20(水) 20:05:04
- 現れた男とも女とも取れる薄汚い怪人物に彼女はお願いする。
「これを動くように息をするように、物を食べるように、ウンチをしておしっこをするように…」
彼女が言い終えると怪人は弟を掬い上げると一度派手に叩き落したあとに
カッターと素手だけで皮やその骨格、果ては毛根から筋繊維、脳細胞までを細かく分解し並べ立てた。
同じようにして周りに会ったおもちゃや猫の死体も分解すると、
今度はぐちゃぐちゃに並べ立てられたそれを裁縫糸と接着剤ですごい勢いで組みだし始めた。
そこまでを確認すると力尽き、彼女は意識を失った。
次に目覚めたときにはすでに怪人は引っ込んでおり、
数々のおもちゃと共に顔を洗う猫の姿と生きている弟が残されていた。
だが彼女は猫の姿をよく見て必ずしも成功したわけではない事に気づく。
ぐちゃぐちゃの状態から組み立てられた猫はよく見ると目に豆電球が入り込んでいた。
だが、一見すれば弟に違和感は無く彼女はそのまま連れ帰り普段通りの生活をすることにした。そこまでを聞いて、青ざめた様子の男が嘘だと否定しようとするが、
珍しく語気を荒げた女にまだ続きがあると言われる。ある日、半狂乱の状態の母の声で失敗だったことに気づく。
彼女は弟を成長させることを忘れていたのだ。
そこで彼女はもう一度、弟を連れ出して怪人に生きたまま“修理”させたのである。
それを失敗があった度に繰り返し、結果、三度彼女の弟は分解され、そのたびに異物が混ざりこんだ。
両親も一度は怪しんで精密検査を受けさせたりもしたが何も写らなかった為、
結局は有耶無耶になったままだったと。
そして女は言う。
最初に修理しに行って貰った時、自分も実は重体であり意識を失った際に怪人によってついでに修理されたと。
その際に自分には猫の目が混ざりこんでしまったために昼間は瞳が細くなるからサングラスをかけているのだと。
男は震えながら言う。
「姉さんは一体、何なんだ?」
女はサングラスを外して逆に質問する。
「あなたこそ一体何なの?」
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303 名前:自治スレでローカルルール他を議論中 :2010/10/20(水) 20:12:57
- 医者行ってもバレないくらい普通で、
生きて成長してけるなら問題ないしいいんじゃね?
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305 名前:自治スレでローカルルール他を議論中 :2010/10/20(水) 20:22:52
- あぁ、ごめん説明不足だった。
何も写らないのは、文字通り何も写らないレントゲンすらまともに
取れなくて医者も困惑するって言う描写があるが結局匙を投げられてる。
両親もとりあえずは生きてるし、普通に知能もあるからまぁいいや、と。説明を省略してたけど怪人は「ようぐそうとほうとふ」と呼ばれています。
元ネタのヨグ・ソトースといい完全にラブクラフトに影響を受けている作品です。
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307 名前:自治スレでローカルルール他を議論中 :2010/10/20(水) 21:02:35
- 猫の目を姉に入れて猫には豆電球入れちゃう修理者のドジっ子ぶりにちょっと萌え。