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731 名前:720 投稿日:02/07/18 12:20
はしょった部分もありますが
筒井「母子像」1/3
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古い家に妻子と住む歴史学者が
玩具店で一匹だけ白かったシンバル猿の人形を買ってきた。
それを家の1歳にも満たない赤ん坊に与えると喜んで遊ぶようになるが、
ある日仕事から帰ると妻も赤ん坊もいなくなっている。
特に状況に何もおかしなところ(強盗の跡とか)はないのだが、
学者はふと嫌なことに気付く。
「お気に入りの猿人形も一緒になくなっている」。

数日前にあった不審な出来事を思い出す。
遊んでいる赤ん坊をふと見ると片腕がボウと霞んでいて見えなくなっている。
驚いて思わずその腕を引っ張ると赤ん坊の腕は戻ったが、
その手には猿の人形が握られていた。

その時赤ん坊の泣き声と一緒にシンバルの音が聞こえる。
廊下に出るとぼんやりと赤ん坊の背中が見えたが
すぐに空気に揺らめいて消えてしまう。


732 名前:720 投稿日:02/07/18 12:23
筒井「母子像」2/3
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その夜警察に失踪を連絡した後庭の木立の中また妻子の姿を見る。
赤ん坊は猿人形を掴んでいる。
妻は学者の呼ぶ声に気付くが見えないらしい。
そのうち二人の姿が消えるのと同時に
猿人形だけ浮き上がってきてそれを学者は掴み取る。
「この猿が二人をある空間に消してしまっている」、
そう考えた学者は猿をずっと握っていることにする。

翌昼家の庭で再び赤ん坊の声を聞く。
猿を掴んでいる自分の右手を見ると手首から先が消えている。
見えないままその手を上に差し上げると、
異空間の中で妻の体と思われるものに触れられた。
学者は妻と呼び合いながら左手もその空間に入れて
一生懸命左手でだけ体を引っ張る。
右手の猿を放すとその状態で消えてしまうのではと思ったからだ。
だんだん妻の足、腰、赤ん坊の足・・と見えてくる。
あせってきた学者はついに猿を放し両手で一気に引っ張った。


733 名前:720 投稿日:02/07/18 12:35
筒井「母子像」3/3
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「しまった、放すのが早すぎた」
猿人形は消え、残ったのはともに首のない妻と赤ん坊だった。

その後猿は二度と現れなかった。
赤ん坊を抱いた妻はずっと古い家の奥の間に座っている。
学者は妻との会話も赤ん坊の声も聞く事は出来ないが体に触れることは出来る。
たまに学者が赤ん坊を抱こうとすると妻は分からず驚くが
腕を軽くたたいて安心させると渡してくれる。
首から上が異空間に行っているせいか何年経っても妻子とも年を取らない。

ここで初めて明記されるが、実は赤ん坊も猿人形と同じ白子(アルビノ)だった。
妻はその子を生んでから外出も庭の手入れもしなくなった。
学者は思う。
妻にとっても赤ん坊にとってもこの状態の方が幸せなのではないかと。
ただ気になるのは私が死んだ後も二人はこの古い家で
誰かが見つけるまでひっそり生き続けるのだろうか。


734 名前:720 投稿日:02/07/18 12:42
あ、ちなみにタイトル「母子像」とは
妻子が首無しになった後一度だけ
学者が空中に浮かぶ二人の首を見るんですよね。
青ざめて目を瞑った妻が眠っている赤ん坊に頬よせている、
それが名画の中の「母子像」のようだと。

735 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ 投稿日:02/07/18 12:45
お疲れ様でした。
しかし純愛小説に思えるのは俺だけか・・・?

確かに何とも言えない読後感と、物語自体の暗さは「後味の悪い話」でした。
面白かったです。

 

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