百済観音(曽野綾子)
埼玉のある地方に浄法寺と光徳寺という隣接した寺があった。
浄法寺は檀家との関係を長々と続け、同時に幼稚園を経営していた。
その為、浄法寺はそれなりに地域に根付き、住職(本文では浄法寺と呼ばれる)
は夫婦共々仁徳者と言われていた ...
風見鶏(都筑道夫)
ノブオ(仮名)は児童向け教材のしがないセールスマン。
遠縁の町工場経営者の厚意で、家賃無料で工場の宿直室に寝泊まりさせてもらっている。
ある時、見知らぬ若い女から電話が来る。
女は民家の二階に監禁されていて、見張りの中年女の入浴中に適当な番号を回しているという。 ...
故アーサー・ジャーミンとその家系に関する事実(H・P・ラヴクラフト)
H・P・ラヴクラフトの短編「故アーサー・ジャーミン卿とその家系に関する事実」
コンゴには昔、無毛の白い類人猿がいたという。
彼等はそれなりの文明を持ち、女王を戴いていた。
ある時偉大な白い神が女王を娶り、息子を産ませると三人(三柱?)そろって立ち去った。
その後神と女 ...
告訴せず(松本清張)
主人公は田舎町の冴えない中年男。女房の妹の亭主(以下、義弟)のおかげで、駅前で食堂をやらせてもらっている。
義弟は議員、今度の選挙は再選できるかどうかの瀬戸際。
主人公、「東京の大先生」の所から「実弾」を持ち帰る任務を託される。
選挙前に議員の取り巻きが消えたら目 ...
獄門島(横溝正史)
瀬戸内海に浮かぶ獄門島。
その獄門島を仕切る鬼頭家は、本家と分家に別れ対立していた。
本家の息子である鬼頭千万太は、戦争から帰る途中、戦友・金田一耕助に手紙を託し
「俺が帰れなければ3人の妹が死ぬ」という言葉を残し死ぬ。
金田一は手紙を届けるためにひとり獄門島 ...
この卑しい地上に(フィリップ・K・ディック)
名前は適当です。
ジョージの恋人ナンシーは、「天使」を呼び出すことができた。
「天使」といっても、翼を持った白く光る高エネルギー体としか形容できない、異次元の存在である。
美しいナンシーは、牧場や屠場で彼らの好物である子羊の血を買い、
幸福の代償(ロバート・シェクリイ)
未来のアメリカ。
A氏の家は電機メーカーB社の新製品で一杯だ。この住宅地では当たり前のことだが。
A氏は今日、一人息子が成人してから30年間の収入を抵当に入れた。
財務課員の話では、孫の生涯収入全部を抵当に入れた顧客もいるそうだ。
(既に孫が ...
合葬(杉浦日向子)
長崎へ遊学していたが、帰省時、幼少からの妹の許婚だった友人が破談を申し入れに来る。
すでに薩長が江戸入りしているが、自分は彰義隊で忠に殉じたいため、家督も弟に譲って家を出るという。
妹は泣き伏す。怒って友 ...
怪物(ロバート・シェクリイ)
とある異星に地球の探査船が到着し、どうにか言葉が通じるようになる。
異星の住民は、
地球人は道義を心得ているだろうか?尻尾を持たぬおぞましい姿は、おぞましい本性を現しているのではないか?
と、激しく議論する。議論の過程で死人が出る。
異星人には、 ...
鏡子の家(三島由紀夫)
主人公の鏡子は金持ちの家付き娘。夫は、気に入らないので追い出した。
小学生の娘は父を慕っているが、鏡子はそれを知らない。
鏡子は大の犬嫌いである。
夫は犬好きで、大型犬を飼っていた。別居の理由の一つである。
鏡子は娘を家政婦に任せっきりで ...