木戸の椿(澤田ふじ子)
汚物の据えた臭いが漂っているような
最下層の者達が住んでいる吹き溜まり長屋に
五歳の娘と母親が身を寄せあって暮らしていた。
母親の生家は三代前までは裕福な呉服問屋だったのが
身上を潰してしまい、それでも働き者の ...
代りに泣く夜(赤川次郎)
主人公は多忙なリーマン。
帰宅しては自宅の留守電に吹き込まれた仕事の留守録を聞き
寝て起きて出社、という毎日を繰り返している。
その日もいつもどおり、帰宅と同時に録音された留守録を回した。
主人公は留守電の案内を自分の声で録音しているの ...
蟹甲癬(筒井康隆)
地球の植民惑星、クレール星で奇病が発生した。
老人の頬に、クレール星固有の生物、クレール蟹の甲羅そっくりの疥癬ができる病気である。
角質化した患部は取り外しができるまでに進行し、そこで停滞する。命に別状はない。
今や男女を問わず、幼児以外の住民皆が感染あるいは発 ...
彼女がその名を知らない鳥たち(沼田まほかる)
主人公は30代の女性。専業主婦というかニート。7年前に別れた彼氏のことがまだ忘れられずにいる。
主人公の内縁の夫Aは、50歳前の色黒チビで不器用・下品・過去に大手建設会社に勤めていたことだけが自慢の
下卑た関西弁の田舎者。昔の病気で、子供 ...
鍵(筒井康隆)
主人公はルポライター。
出版社で原稿を書き上げた後、昔の家(古い建売)を覗いてみようと気まぐれを起こす。
建売で、その前に住んでいたプレハブ小屋の鍵を見つける。
小屋で、以前勤めていた会社のロッカーの鍵を見つける。
会社のロッカーで、鍵を二本 ...
グランド・ブルテーシュ奇譚(バルザック)
フランスがスペインと戦争をしていた時代、ある町に伯爵夫妻が暮らしていた。
伯爵は気性の荒い美男、伯爵夫人は信心深い美女で二人は愛し愛されて結婚した。
ある時から夫人は頭痛を愁え、夫とは寝室を別にするようになった。
夫人の寝室には窓のない
首(紋天沖世)
大学生の主人公は、学友を連れて実家に立ち寄る。
それぞれ、老人の生首を入れたクーラーボックスを下げている。
近未来の日本では、現役世代一人で20人余りの老人を支える計算になっていた。
政府は70歳以上の老人を殺すことを許可 ...
危険な関係(C.D. ラクロ)
「紳士淑女が堕落しないために、悪人たちの手口をここに公表する」
という口上で発表された恋愛小説なんだけど、
作中で色男が次から次へと女を口説いて誘惑して時には騙して手に入れて、
また美人悪女も奔放の限りを尽くして人生堪能している ...
銀齢の果て(筒井康隆)
とっくの昔に年金制度が破綻した近未来。政府は「老人相互処刑制度」を制定する。
それは何年かに一度、全国からランダムに町村を選び出し
そこに住む70歳以上の老人を最後の一人になるまで殺し合わせるという
まあ、簡単にいえばバトルロワイヤルの老人版パロディ ...
凱旋パレード(ヘンリー・スレッサー)
未来のある日、長い戦争が終わった。今日はニューヨークの五番街で凱旋パレードがある。
半壊したオフィスで働く娘たちは、みな大事にしまってあった一張羅を着る。
徴兵された社長の代わりに会社を切り盛りする社長夫人も、麻袋みたいなスーツを捨てて花柄のド ...