死者の手袋(曽野綾子)
主人公は家政婦。結婚を控えた娘がいる家庭に仕事に行く。
その娘は自分の部屋を整理していたが、いっこうに進まずボーッとしている。
何か思い入れのある品なのかと、そっとしておいたが
夕方になって母親が介入すると、紐で ...
不満(星新一)
『畜生、俺がなにをしたっていうんだ。やめろ、やめてくれ。』
そんな言葉も聞いてくれるはずもなく、彼はロケットの中に無理やり押し込まれた。
大気圏を通過した頃だろうか、彼の体はカチカチに固まってしまった。
『畜生、奴らめ…畜生、畜生。』 ...
ヒダハタケのコラム
文学作品ではないしもう何年も前の事なので具体的な本の情報は忘れてしまったんだけど
初めて読んだキノコの図鑑にヒダハタケという毒キノコが載っていた。
特徴的な見た目をしているわけでもなく、いたって普通の地味な毒キノコで、
著者のコラムには ...
モンスター(百田尚樹)
美川美子(仮)は、老若男女誰もが溜息をつくような絶世の美女。
とある田舎町で一流シェフを雇い、小さなビストロ店を経営している。
絶世の美女が経営する一流ビストロということで、店は連日の大賑わい。
しかし美子は美人なのも鼻にかけない、非常に聡明で謙虚な性格であ ...
耳(阿刀田高)
孤児院育ちでのちに篤志家A氏の養女になった女性、春子が
孤児院の女院長に宛てた手紙を時系列で並べた書簡体小説。
春子は出自不明の捨て子で、養女になる前の町村春子という名前は町長から与えられたもの。
孤児院のあるこの町と隣村の境目で春に捨てられた赤ん坊だから、と思っている。
凶事(阿刀田高)
主人公は独身の中年女性。
姉とその娘(姪)が近くに住んでいて交流がある。この姉が曲者。
小さい頃から病弱で長くは生きられないと言われ、
お約束通り両親に溺愛されて育った。
主人公に縁談が来たときには
「死ぬ前に一度お見合いをしてみたい」とよくわからないことを言って ...
たったひとくちで・・・・・・(平山夢明)
料理評論家の夫と一人娘をもつ主婦のもとへある日見知らぬ男がやってきて
「あなたの娘さんを誘拐させていただきました」と言った
あまりに突然のことに、信じられずにいると男は娘のハンカチを出し証明して見せる。
混乱し泣きすがりながら必死で娘を返してく ...
あのころはフリードリヒがいた(ハンス・ペーター・リヒター)
1925年、大戦の敗北で疲弊したドイツに「ぼく」は生まれる。
「ぼく」の父親は失業し、家計は火の車だったが
母方の実家の援助もあり「ぼく」はそれなりに幸せに暮らしている。
「ぼく」達が住むアパートの1階上にはユダヤ人のシュナイダー一家が住んでおり ...
アカネちゃんとなみだの海(松谷みよ子)
アカネちゃんは小学1年生。
赤ちゃんの頃両親が別居したのでずっと母と姉と暮らしている。
赤ちゃんの頃履いていた自分の靴下と会話が出来て、彼らと大の仲良しである。
ある日、母親の友達とその息子ショウくん(2歳児)がア ...
孤島の鬼(江戸川乱歩)
主人公と彼に恋心を寄せる友人A。
Aは幼い頃母から性的虐待をされて女嫌いになっていた。
Aの出身地はとある田舎の孤島で両親は身体障害者。
実は父親は自らの障害のせいで世の中を憎んでおり、
貧しい家の赤子や捨て子を集めてはわざと障害を持たせて ...