黙契(森村誠一)
主人公は、ふとしたきっかけから世間に存在する「黙契」というものに気づく
黙契とは、法律で決められたわけではないし、常識ともまた少し違う
個人間や社会の間で何となく決められた、いわゆる暗黙の了解ってやつのこと
例えば、電車やバスに乗るときに互いのパーソナルスペースを極力侵さない ...
大好きな姉(高橋克彦)
「私」は落ちぶれた旧家の次男、法事のために久しぶりに帰省した。
雨模様で、バス停には兄嫁の咲子が傘を持って迎えに来てくれていた。
兄より随分年下の咲子は相変わらず若々しく美しいが、片目を黒い眼帯で隠している。
まだ義眼を入れてないのか ...
笑う椅子(中井英夫)
外国のファッション誌に夢中になっていた明子は、一人息子の声が聞こえない事に気づいた。
また姑の部屋だ、と舌打ちしたい気持ちで離れに行くが、息子はいない。
姑は電気もつけずに月光の庭を見ている。
「お義母さま、忠博はこちらに参っておりませんの?」
「さあね、おおかた庭で ...
判例タイムズ/横浜地裁平24.10.30判決[平21(ワ)2425]
専門用語が多かったのでなるべく簡単に書きます。
ある小児科(そこの医者をBとする)にある親子(親をA,子をA子とする)が診察に訪れた。
A子は生後数か月なのに生後2ヶ月の体重よりも軽く体もアトピーだらけ。
また検査の結果栄養状態がかなり悪 ...
ケモノ(道尾秀介)
※ネタバレ注意
主人公はエリート揃いの厳格な家族の中で唯一の劣等生で浪人中
ある日祖母が知人から譲り受けたという刑務所作業製品の椅子の脚がぽっきりと折れる
断面にはそれを作ったSという名の受刑囚のサインと
「犬」という字が含まれる不可解なメッセージのよう ...
レナードの朝(オリバー・サックス)
嗜眠性脳炎で、起きていても意識は寝たきりに近い状態の患者達が
新薬の投与で健康な意識になるが
結局短い期間で耐性が出来て、また意識のない世界に戻ってしまう
所謂アルジャーノン系の話だけど、
全て実際にあったエピソードなのが後味悪い ...
ロートレック荘事件(筒井康隆)
ミステリなのでネタバレ閲覧注意
浜口修は8歳の時、イトコの浜口重樹に脊椎を損傷する大怪我を負わせ、
彼をロートレックと同じ奇形の体にしてしまった。
8歳の修は泣きながら、君には何も不自由はさせない、
僕が君を守る、死ぬまでそばを離れない!と誓い、実際その通り ...
荒野にネコは生きぬいて(G.D.グリフィス)
生まれて間もない子猫が荒野の真ん中に放りだされた
子猫は新しい遊びだと考え飼い主を待ち続けるが、車で走り去った飼い主は戻ってこない
やがて只事ではないと気がついた子猫は、戸惑いながらも歩き始める
入江の記憶(松本清張)
「私」は義妹と不倫中。
不倫旅行で温泉地に出掛け、人目を避けるようにわざと寂れた旅館に泊まった。
義妹は「お姉さま(妻)に悪いワ…」としおらしくしているが、罪悪感が媚薬になっているようだ。
顔を隠すように帽子を目深に被った「私」は、宿帳の記入も女中との応対も義妹に任せている。 ...
天国への階段(白川道)
昔に読んだだけで違っていたらすまん
主人公は北海道の零細牧場の生まれ。
幼なじみのヒロインAとは恋人同士だったが、主人公父がA父に騙され牧場を売り飛ばされ
主人公一家はA一家が経営する大牧場の隅っこで細々暮らすはめになり、二人は別れる。
そしてAは金持 ...